大宇造船海洋は防衛産業に一つの活路を見出している(写真は同社が建造した韓国初の国産潜水艦、1992年10月10日撮影、写真:Fujifotos/アフロ)

 2022年9月26日、政府系金融機関であるKDB韓国産業銀行の会長が記者会見を開き、経営権を持つ大宇造船海洋の買収にハンファグループが名乗りを上げたことを明らかにした。

 大宇造船を売却する動きはこれで6度目といわれ、韓国の産業界では「今度こそ」と「今度は大丈夫か」という声が交錯している。

 産業銀行の姜錫勲(カン・ソクフン=1964年生)会長の9月26日の会見は、「サプライズ」だった。

財閥7位のハンファグループ

 韓国財閥7位のハンファグループが、大宇造船海洋を買収する優先交渉権者となることで産業銀行と合意したと発表したのだ。

 ハンファグループは、大宇造船海洋が実施する増資を引き受ける形で2兆ウォン(1円=10ウォン)を出資する。

 49.3%の株式を保有する筆頭株主となり経営権を握る。現在55.7%の株主を保有する産業銀行の持ち株比率は28.2%の第2位株主となる。

 一定期間、より良い他の買収提案がない場合、ハンファグループと正式契約し、2023年上半期(1~6月)中に売却手続きを終える計画だ。

 ある財閥の役員は「別の企業が買収に名乗りを上げる可能性は低い」とみる。

 この役員は、「大宇造船海洋を買収して経営できるのは、大手財閥しかない。ハンファグループは数少ない有力候補だった」と話す。

 激動の歴史を生き残ってきた大宇造船海洋はまたしても大きな転機を迎えることになるのか。

いまも大宇の名前が残る

 大宇造船海洋の前身は、1973年設立の大韓造船公社だった。1978年に大宇(デウ)グループが買収して以来、「大宇」の名前がついている。

「世界経営」を掲げて1970年代に急成長した大宇グループの創業会長だった金宇中(キム・ウジュン)氏は、70代後半に機械、造船、自動車事業を立て続けに買収して一気に韓国の大手財閥に浮上した。

 造船事業は買収直後に世界経済の低迷と造船不況で急速に業績が悪化した。

 この時の危機を乗り切ったのは金宇中氏の「現場経営」だった。