恩赦を受けソウル拘置所から出た盧泰愚元大統領(1997年12月22日、写真:AP/アフロ)

「今日は10・26だね。あの頃は軍隊にいたけど何も分からなかった」

 2021年10月26日、60代の韓国人の知人とコーヒーショップでこんな話をして別れたら、しばらくして盧泰愚(ノ・テウ)元大統領死去のニュースが流れた。

 10月26日は、1979年に朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領が部下の韓国中央情報部(KCIA)長官に暗殺された日だ。知人ともこの日の話をしていた。

盧泰愚氏に対する評価

 この暗殺劇を境に運命が大きく変わった盧泰愚氏も、42年後の同じ日に病気で亡くなった。88歳だった。

 10月26日は韓国の2人の大統領経験者が死去した日になった。

 盧泰愚氏が韓国の陸軍士官学校を卒業して配属された師団長が朴正熙氏だった。

 また盧泰愚氏は朴正熙政権時代に青瓦台(大統領府)でも勤務経験があるという。

 筆者は、これまで6人の韓国の大統領経験者と長時間話をしたことがある。盧泰愚氏もその一人だ。

 韓国では、大統領在任期間中の「実績」に比較すれば、盧泰愚氏の評価は高くない。軍事クーデターや光州事件の加担者、不正蓄財問題など重大犯罪があったからだ。

 さらに、陸士同期の全斗煥(チョン・ドファン=1931年生)氏に比べてカリスマ性に欠け、何となくイメージが薄いこともその理由かもしれない。

 それでも在任中の業績は多い。ドラマより劇的な人生を生き抜いてもきた。いったいどんな人物だろう。