昨年12月1日、「パプア独立記念日」の記念集会に参加した西パプアの支持者。顔にペイントしているのはパプア独立運動の象徴であるモーニングスター旗(明けの明星旗)(写真:AP/アフロ)

 インドネシアの東端、ニューギニア島の西半分を占めるインドネシア領パプア地方(パプア州、西パプア州)で社会不安が高まり、緊張状態が続いている。治安を担う国軍・警察とパプア地方の独立を目指す武装組織による衝突が激化しているためだ。

 この4月以降、パプア州中部の山間部にあるプンチャック県では、武装組織による住民や警察官の殺害が続いており、治安は悪化していた。さらに4月25日には同県イラガで「国家情報局(BIN)」のパプア地方責任者であるイ・グスティ・プトゥ・ダニー陸軍准将が武装勢力による待ち伏せ攻撃によって命を落とした。これを受けてインドネシア政府が本格的な治安維持と武装勢力掃討作戦に乗り出したため、パプア地方では一気に緊張が高まっている。

 5月6日には国軍司令官と国家警察長官の治安当局トップ2人が揃ってパプア州を訪問し、現地で治安維持に当たる部隊指揮官や地元の地方自治体関係者と面談するなど本格的な掃討作戦に向けた地ならしを始めている模様だ。そのため現地プンチャック県などでは戦闘激化に備えて住民の避難も始まっているという。

「虎の尾」を踏んだ武装組織

 4月25日、プンチャック県イラガ地方を視察中の軍の車列が道路脇で待ち伏せしていた武装勢力に襲撃され、銃撃戦となった。この戦闘でパプア地方を担任するBIN責任者であるプトゥ・ダニー准将が死亡した。武装勢力との衝突で「現役の陸軍准将」の死亡は最高ランクの犠牲とされ、その衝撃は大きかった。