昨年4月18日、大統領選投票日翌日のジョコ・ウィドド大統領(中央)。ジョコ大統領の左がメガワティ・スカルノプトゥリ元大統領、右はマールフ・アミン副大統領(写真:AP/アフロ)

(PanAsiaNews:大塚 智彦)

 インドネシアでは12月9日に統一地方選挙が予定されているが、その選挙で、ジョコ・ウィドド大統領の長男ギブラン・ラカブミン・ラカ氏(32)が中部ジャワ州の古都ソロ(スラカルタ)市長戦に立候補することが7月17日に決まった。これに対し、「現職大統領の長男という立場を利用した世襲だ」との批判と、逆にこれを是認して歓迎する世論とが交錯している。

 日本でも政治家の「世襲」は決して珍しくない。安倍晋三首相は自民党の有力者で外相も務めた安倍晋太郎氏の次男だし、河野太郎・防衛相も衆議院議長、副総理経験者の河野洋平氏の長男である。これは日本での選挙には「地盤・看板・鞄の“三つのバン”が不可欠」と言われる政治風土が関係しているためだ。

 実はインドネシアも同様だ。

 たとえば「独立の父」として現在も国民の強い支持と人気を誇るスカルノ初代大統領の娘、メガワティ・スカルノプトゥリさんは第5代大統領(2001年~2004年)となり、現在も最大与党「闘争民主党(PDIP)」の党首として依然として政治への影響力を維持している。

 そのメガワティ党首の長女プアン・マハラニさんも国会議員であり、さらに国会議長の要職をも務め、次期PDIP党首、そしていずれは大統領候補との声もでているなど、世襲は当たり前のようになっている。

 特にインドネシアで「看板」、つまり知名度、血族が重要視されている。「地盤」である支持組織・母体、政党はその「看板」に付随するものとされ、「鞄」である選挙資金も本人の財力だけでなく、周囲で支援する財閥や企業経営者などから自然に集まってくるケースが多い。要するに「血族」や「直系」であることを極めて重視する土壌が、必然的に多くの国民が「世襲」を容認する背景になっているとも言える。

世襲制批判は一部、投票は自由と強弁

 最大与党PDIPからソロ市長選への立候補が決まったギブラン氏は、オーストラリアの大学を卒業し2010年からソロでケータリングの会社を立ち上げ、弟と共に複数の飲食店を経営するなどビジネスマンとして活躍してきたが、政治経験は全くのゼロ、素人である。

 にもかかわらず政治の世界に挑む理由について、「ビジネスでは雇用した人だけしか支援できないが、市長になれば約50万人のソロ市民を支援することができる」と、多くの市民のために尽力したいということが立候補の動機であるとギブラン氏はマスコミを通して語っている。