AIの社会実装に成功している中国。背景には米国に次ぐAI人材のベースがある(写真:アフロ)

(木村 優志:Convergence Lab.株式会社 代表取締役CEO)

失敗が成功につながるAIプロジェクトとは

 AI(人工知能)の飛躍的な発展が注目されたことで、事業応用できないかと多くの企業がPoC(概念実証)に乗り出している。社内に技術者がいない企業はIT企業に開発を外注し、業界は「PoCバブル」とでも言うべき案件に湧いた。AIへの企業の期待は根強く、IDC Japanの調査によると、2019年の国内AI市場は前年比56%増の818億4400万円と成長を続けている。

 一方、AIの開発プロジェクトは失敗しがちだ。ITのように外注するほど成果から遠ざかるAIプロジェクトの特徴は、前回の記事で紹介した通りだ。成果につながる開発体制へとシフトしなければ、不毛なプロジェクトが量産されてしまう。

 失敗しがちなAI開発プロジェクトだが、成果につながる開発体制では失敗が起こらないかといえば、そんなこともない。プロジェクトではどんなAIが作れるのか、作ったAIが役に立つのかを試行錯誤しながらすすめるため、成果が出るまでは失敗の連続ともいえる。

 成果が出せないまま失敗を重ねるプロジェクトと、失敗を次につなげて成果を掴むプロジェクトを分ける最大の要因は、経営者の主体的な協力姿勢にほかならない。実際のAI開発を紹介しながら、なぜ経営者の協力が欠かせないかを説明したい。