藤浪晋太郎投手。写真は2017年3月、日本代表チームのメンバーとして参加したWBC1次ラウンドのときのもの(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 この問題は根が深い。そう思わずにはいられない自分がいる。阪神タイガースに所属する藤浪晋太郎投手と伊藤隼太外野手、長坂拳弥捕手の3選手がPCR検査で陽性反応を示し、新型コロナウイルスに感染した。3選手いずれも入院中とはいえ幸いにして症状は回復傾向にあり、2度目のPCR検査で陰性が確認されれば退院が可能になるという。

 ただ日本のプロ野球界から初の罹患者が現れた衝撃は大きく、NPB(日本野球機構)とセ・パ12球団が目指すとしていた4月24日の開幕戦も見送られることが確実となった。

「実名公表」に対する拍手喝采から一転・・・

 しかし、開幕が再びずれ込むこと以上に驚かされているのは阪神のずさんな対応だ。

 球団側は発表当初の経緯説明で、3選手のうち最初に名前が公になった藤浪について「実名で報道してください」と本人が望んだことを強調していた。それまであまり知られていなかった嗅覚の異常が初期症状として現れたことで、多くの人たちへの啓発につながると考えたとのことだった。

 この“大本営発表”にまんまと乗せられ、一部のメディアは実名報道を望んだ藤浪を大絶賛。稀代のヒーローであるかのごとく「よくぞ、勇気をもって名乗り出た」と奇妙なぐらいに持ち上げまくった。ここまでは阪神側の思惑通りだったのかもしれない。

 ところが徐々に真相が明らかになってくると大きく逆風へと変わった。大阪府や神戸市など行政側の発表によって藤浪ら阪神の選手と会食していた20代女性3人の新型コロナウイルス感染が判明。3月14日にタニマチと思われる知人宅で行われたホームパーティーに藤浪ら7選手が参加していた事実が明らかになり、その場は飲食業に務める若い女性たちもまじえた総勢30人以上の“怪しげな会合”であったことも分かってきた。内情を人づてに聞いていたと思われる球界OBがラジオ番組でゲスト出演し、その会合の詳細を赤裸々に語ったことも真相究明につながった。