2019 WBSC U-18ワールドカップ スーパーラウンドでの佐々木朗希投手(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 一抹の不安はどうしても拭えない。千葉ロッテマリーンズのドラフト1位・佐々木朗希投手の今後についてである。

 高校最速163キロをマークした右腕は岩手・大船渡高校から4球団競合の末、くじ引きで交渉権をつかんだロッテへ入団。潜在能力は間違いなく今年のルーキーたちの中でも群を抜いている。

まだ大観衆の大舞台を知らない黄金ルーキー

 確かに東京ヤクルトスワローズにドラフト1位で入団した奥川恭伸投手も名門・星稜高校エースとして昨夏甲子園の準優勝をつかんだ輝かしい経歴の持ち主。とはいえ素材という点に関しては高校時代から多くの檜舞台を経験して完成形に近い奥川より、踏んだ場数は少ないながらも伸びしろを感じさせる佐々木のほうが現時点でメディアにとって魅力に映っているようだ。右ひじに軽い炎症が見つかった影響もあって奥川は春季キャンプ二軍スタートが決定。対照的に佐々木が一軍スタートとなったことも密着マークを図る各メディアの〝佐々木シフト〟に拍車をかけている。

 だから佐々木に関する各メディアの扱いは比較的大きい。特に各スポーツ紙や夕刊紙は佐々木を高卒スター候補生として白羽の矢を立て、その一挙一動をくまなく詳細にリポート。しかも時折、明らかに針小棒大な内容の記事も散見され、ネット上で「わざわざ、こんなに大げさにする必要はないのに」などと書き込まれることも珍しくない。

 同じく取材する側に立つ者として耳の痛い話だが、これにはおおむね同感だ。いくら黄金ルーキーとはいえ、まだプロデビューもしていない18歳。メディアに慣れているはずもなく〝免疫〟は非常に低い。しかも大船渡は決して強豪校ではなく高校野球の聖地・甲子園に春夏とも未出場。数万人の大観衆の前で甲子園のマウンドに立ち、日本中から熱い眼差しを向けられる独特の重圧も彼は実際のところ知らない。