再改造内閣を発足させ 首相官邸で記念撮影に臨む安倍晋三首相ら(写真:ロイター/アフロ)

(朝比奈 一郎:青山社中筆頭代表・CEO)

 9月11日、「第4次安倍第2次改造内閣」が発足しました。安倍首相によれば、今回の内閣は、「安定と挑戦の内閣」だそうです。

「安定」、「挑戦」、ともにいい言葉ですが、ただ普通に考えればこれらは両立しないものです。挑戦するということは、一般的には「安定を犠牲にして思い切って勝負する」ということですし、安定を優先しようとすれば「あまり挑戦はしないようにしよう」ということになります。そういう意味では、矛盾する言葉であり、言葉の組み合わせ的には違和感が残ります。

 新内閣を、「安定」と「挑戦」のどちらに重心があるのという視点で眺めてみれば、答えは明らかに「安定」と言えます。挑戦の部分はほとんど見当たらないのです。

3形態からなる安定人事

 私は、この「安定」ぶりを示す特徴は、さらにS、R、Uの3形態に分類できると思っています。

 最初のSは「Stay」です。自民党幹事長は二階俊博さん、政調会長は岸田文雄さん、官房長官は菅義偉さん、財務大臣兼副総理は麻生太郎さんがそれぞれ続投しました。つまり、要のポストは現状維持。この「Stay」でそれまでの安定した体制をがっちり維持していこうという狙いがあるわけです。

 つぎのRは「Reuse」です。そのまま訳せは「再使用」ですが、これまで安倍首相が主要ポストに起用してきた人材を、同格のポストに再び起用しているケースです。例えば、経済再生担当大臣だった茂木敏充さんを外務大臣に、外務大臣だった河野太郎さんを防衛大臣にしたのは同格の閣僚ポストへの横滑りですし、またかつて総務大臣を務め、最近までは衆院の議院運営委員長だった高市早苗さんを再度、総務大臣に任命するといった例もあります。

 あるいは総務会長だった加藤勝信さんを厚労大臣にする、長く官房副長官を務め経済産業大臣だった世耕弘成さんを今度は参院の幹事長にする、かつて文部科学大臣を務めた下村博文さんを党の選対本部長にする、というのも同様でしょう。

 自民党内には「入閣待機組」と呼ばれるキャリアを重ねて議員がたくさんいます。しかし、そういう人材よりも、気心が通じていて、かつ以前起用した人材を優先的に再起用しているわけです。これも安定性を重視した人事だったからこそだと思うのです。