2020年オリンピックの選手村建設が進む東京のベイエリア(2019年6月6日、写真:AP/アフロ)

「水は低きに流れる・・・」

 今回の、お台場周辺での汚水騒動を見て改めて強く思うのは、この基本的な事実です。

 川は山から谷、高台から平野に向かって流れ、やがて河口から海に注ぐ。当たり前のことです。

 では、暗渠にすればその状況は変わるでしょうか?

 変わるわけがありません。では「下水管」は?

 当然ながら、下水も水の道、一種の「川」ですから、やはり勾配、傾きがないと流れて行きません。

 20年ほど前、同僚だった大垣眞一郎さんの部屋をお訪ねして水環境の問題を教えてもらったとき、一番最初に「へぇ」と思ったのがこのポイントでした。

 ちなみに大垣さんは国立環境研理事長、国際水教会副会長などを歴任され、内外のトッププロフェッショナルと申し上げていいと思います。とはいえもし、本稿に瑕疵があればすべて私の文責にほかなりません。ご指摘いただければ幸いです。

 下水管にも勾配はつけられている。上流から流れてくるとき、緩やかすぎる勾配だと水が淀んでしまうことがある。

 暗渠には陽があたらず、流れが淀めば、当然ながら様々な生物が繁殖して水は腐り、悪臭その他の問題が発生する・・・。

 当時の大垣研では、光を照射して埋設水道管内の雑菌を減らし、安全な水を作る関連のテーマも扱っておられました。環境を守るために見えないところでエネルギーが使われているのです。

 この事実を一般市民はほとんど知らないと、大垣さんが強調されていたのが印象に残っています。