【AFP記者コラム】先祖の声が聞こえる─私が見た東日本大震災

東日本大震災で発生した津波に洗われる海岸。(c)AFP/Sadatsugu Tomizawa〔AFPBB News

 8月1日付「産経新聞」は27面に、「自衛隊展示中止に『朗報』」「神戸 要請団体の投稿に批判」という2行見出し、6段記事を載せた。

 大丸須磨店(神戸市、大丸松坂屋運営)が計画していた自衛隊の車両展示イベントが複数の団体や住民のクレームで中止に追い込まれたことに対し、女性団体「新日本婦人の会兵庫県本部」のSNS(会員交流サイト)が「朗報」と書き込んだこと、これに対し市民の間から批判が相次いでいるという報道である。

 国際情勢は予測を超えた動きを見せている。そうした中で、米国のドナルド・トランプ大統領が日米安保の片務性にクレームをつけ、憲法9条が「日本の平和」を無条件に保証するものでないことが明らかになってきた。

 また、日本を取り巻く近海では大規模地震などが予知されている。阪神淡路大震災や東日本大震災などで多大の被災と犠牲者を出した教訓などから、自衛隊による迅速な人命救助の必要性と重要性が強く認識されるようになっている。

 国の安全と国民の生命・財産をまもる「自衛隊」の立ち位置を明確にする必要があるが、反自衛隊政党・マスコミの自衛隊に対する間違った宣伝とこれらに同調する分子が、上記「朗報」のような軽薄をもたらしている。

 我が国の領土を侵食され、災害で多大の犠牲者を出すような「無知の涙」を流しては後悔してもし切れない。いま必要なことは、迫りくる不透明な国際情勢と大規模地震等から国と国民をいかに守るかである。

阪神大震災で兵庫県が犯した失態

 兵庫県知事の反自衛隊的姿勢から阪神淡路大震災(発災平成7年1月17日、午前5時46分)では、県の自衛隊派遣要請(知事要請・午前10時)が大幅に遅れ、人命の犠牲と被害の拡大をもたらしたとされる。

 その教訓から、各都道府県の自衛隊との連携が進み、東日本大震災ではかなり有効に機能したことが検証されている(岩手・宮城・福島県からの自衛隊への災害派遣要請は発災後数十分以内で行われた)。

 関係法令の見直しをはじめ、地方自治体と自衛隊の共同訓練の積み重ねがあり、また地域のイベント時には今回のような自衛隊車両や災害パネルの展示なども行なわれ、相互信頼と親近感も高まり、有効に機能したからである。

 多くの客が集まるデパートの災害などでは、パニックが生じ誘導などに困難をきたす。

 大丸須磨店が「災害時に救助などを行う自衛隊の活動を知ってもらおう」と企画し、正面玄関前で自衛隊の車両を展示するほか、救助活動をパネルで紹介し、いざという時のために住民の理解と協力を得ようとしたのは至極当然のことであった。