ガソリンを撒かれて35人が亡くなった京都アニメーション第一スタジオ(写真:アフロ/AP)

 7月18日に発生した京都アニメーション放火殺人事件。

 7月が終わる時点でも容疑者は京都市内の病院で、意識は取り戻したものの呼びかけると瞼や眼球を動かすという程度の重症で、取り調べはもとより逮捕状の執行もできない状況が続いています。

 前回も記した通り、報道の中には「動機の解明」が重要と記すものがありますが、私は一貫して再発防止の徹底が第一と考えています。その背景に「やけど」の問題があります。

 今回の事件で犠牲者はすでに35人に上ります。また、容疑者を含め火災で重症を負った人がたくさんおられます。

 その細かな病状は分かりませんが、35人目の犠牲者となった方については、本人確認のためDNA鑑定が必要であったとの報道から知れます。

 火災による負傷、とりわけ火傷は、以後の人生に様々な影響を及ぼす可能性があります。

やけどについて
身近な空襲の事例から

 私事で恐縮ですが、亡くなった私の母親は、戦時中に疎開していたい九州は福岡県、大牟田の空襲で「焼夷弾」(のちの<ナパーム>に相当)の直撃を受け、全身複雑骨折、全身4度の「炭化火傷」を負い、19歳から21歳まで寝たきりの状態を克服して、社会復帰してきました。

 「焼夷弾」とは「夷」を「焼」く爆「弾」と書く。これは、紙と木で作られた日本の都市家屋と、そこにいる住民を「焼く」ために開発された兵器で、およそ人道に悖る、とんでもない代物です。

 小さな筒状の爆弾には「油」が入っていて、それが燃えるのですが、人間の体に着くと取れない、消えない。本当にたちが悪く作られた「悪魔の兵器」にほかなりません。

 都内の家から九州に疎開していた19歳の女学生だった私の母は、高射砲すぐ近くの浅い防空壕を焼夷弾が直撃。壕ごと生き埋めになり、掘り出されて命を取りとめましたが、それから2年間、ベッドで寝た切りとなりました。

 母の体は、全身にケロイドがありました。顔に大きなやけどがなかったのは不幸中の幸いと本人がずっと言っていました。

 右手と左足が複雑骨折し、完治しましたものの直ったときには左右の足の長さは1~2センチ違っていました。