(福島 香織:ジャーナリスト)

 中国湖北省の武漢市新洲区で6月末から7月にかけて、ゴミ焼却発電所建設計画に反対する大規模な住民デモが連続して起き、警察と衝突する騒ぎが起きた。

 香港の大規模デモの国際報道の影に隠れているが、中国では近年、けっこう大規模デモが起こっている。特にゴミ処理場建設にまつわるデモが目立つ。というのも中国は今や世界最大の都市ゴミ発生国。都市部の焼却ゴミは、2015年は1日あたり23.5万トン前後だったが、2020年には59万トン以上に増える見込みだ。2030年には米国の3倍のゴミ排出国になるという推計もある。このため習近平はゴミ政策を中心に環境問題対策にたいそう熱心である。2017年暮れには海外ゴミの全面的禁輸措置に踏み切り、「中共ゴミ革命」ともいえる政策を打ち出した。また、各地でゴミ焼却施設の建設プロジェクトが一気に進む中、2019年6月初頭にはゴミ分別処理に関する大号令を発令した。

 習近平政権はなぜ、ゴミ政策に熱心なのか。中国の“ゴミ”をめぐる問題について、俯瞰してみたい。

増え続ける住民の建設反対デモ

 武漢の反ゴミ焼却発電所建設計画デモは6月28日から始まった。最初は百数十人程度の住民が建設計画説明会の日に建設反対のチラシをまいたりする程度の集会だったが、地元政府側が警察を呼んだため、住民の怒りを呼び、大規模化。夜には衝突が起きた。このとき、警官隊がデモ隊に暴力を振るう様子の映像が一部ネットに流れ、それがさらに住民の怒りを呼び、連日大規模化してデモが繰り返されていった。1万人規模にまで膨らみ、解放軍の“タンク”出動といったデマも流れた。最終的にはデモ隊とほぼ同じ規模の警官隊が投じられ、高圧放水車や装甲車まで出動して、デモは7月4日までに鎮圧されたという。逮捕者は20人前後出た模様だが、工事自体はとりあえず止まっているようだ。

 このデモが大規模した背景には、この地域の“ゴミ処理場”汚染が長年にわたり深刻な状況にあることが挙げられる。