(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

 2つの衆院補選は、予想通りの結果となった。大阪12区では維新が勝利し、沖縄3区では、玉城デニー知事の後継候補が当選した。

 共産党などは、野党共闘が一段とバージョンアップしたかのように言っている。だが実態は、もともと弱い者同士の野合でしかなかった野党共闘の綻びが一段と進んだように思える。

屋良氏当選は「野党共闘」の成果なのか?

 玉城デニー氏(現沖縄県知事)が知事選挙に出馬し、衆院議員を自動失職したために行われたのが今回の衆院沖縄3区の補欠選挙だった。

 この選挙には、玉城氏の後継としてフリージャーナリストの屋良朝博氏が無所属で立候補した。これに対して自民党は、島尻安伊子元参院議員(元沖縄北方担当相)を擁立した。島尻氏と言えば、「千島歯舞諸島居住者連盟」という名称を読む際に、「千島、はぼ、ええっと、なんだっけ」と言葉に詰まり、傍にいた秘書官に「歯舞諸島(はぼまいしょとう)」と教えてもらったことで有名になった人である。

 仮にも、北方領土問題を担当する大臣がその島の名前も読めないというのだから、恥ずかしい限りである。ちなみに前沖縄・北方担当相の福井照氏も色丹(しこたん)島を「しゃこたんとう」と言い間違えた。他に擁立すべき候補者がいなかったための苦肉の策が島尻氏の擁立だったのだろう。これでは玉城氏の後継に勝てるわけもなかった。

各党代表に頭を下げた小沢一郎氏

 玉城デニー氏は、小沢一郎氏が率いる自由党の所属議員だった。屋良氏も自由党に所属しているが、「オール沖縄」の支援を受けるために無所属で立候補したと言われている。これを主導したのは小沢氏である。

「野党共闘」に熱心な小沢氏は、野党各党代表に沖縄入りを要請し、4月16日には、立憲民主党の枝野幸男代表、国民民主党の玉木雄一郎代表、共産党の志位和夫委員長、小沢氏が揃って沖縄で揃い踏みを果たした。夏の参院選に向けて「野党共闘」に何としても弾みをつけたい小沢氏の執念だろう。