梅の花に満たされる 江蘇・南京

中国・江蘇省(Jiangsu)南京市(Nanjing)の雨花台公園で満開の「春の色」。(c)CNS/JCM/AFPBB News 〔AFPBB News

 NNNドキュメント「南京事件 兵士たちの遺言」(日本テレビ・2015年10月4日放映)は、「ギャラクシー賞 テレビ部門優秀賞」をはじめ、1つの番組で7本受賞した。

 番組製作者の清水潔氏は「事実の証明に苦労した放送だったので、・・・それを後押しして頂けたようで嬉しく思う」と、著書『「南京事件」を調査せよ』(2016年8月刊)で述べている。

 日本テレビは2018年5月14日に「南京事件Ⅱ」を放映。これを観た福田康夫元首相は、「日本軍が中国人を殺したのは事実なんだ」と思い、また幼少の一時期を同地で過ごした懐かしさと、習近平主席が「南京大虐殺記念館」の内容を大幅に入れ替えたと知り同館を訪問する気になったという。

 著書は1年余後に早くも文庫本となり、その「あとがき」では産経新聞(平成28年10月16日付)や一部の人からもの言いがついたが、調査報道の真髄に迫るのが評価されていることが分かる。

 多くの捕虜を抱えた103旅団(13師団)の捕虜対処では、飯沼守上海派遣軍参謀長の日記でも記述が曖昧で、肝心なところは「噂アリ」の記述でしかなかった。

 すなわち、歩兵第66連隊と山砲兵第19連隊の約2万に上る捕虜対処には不明なところが多かったのである。

 この点を1次資料発掘で解明した労を多とし、善悪はともかくとして、戦争の悲惨さや軍人の生き様などに視聴者を向きあわせた功績は大きいとみる。

 ただこの一文を草するのは、次に述べる2つの危惧からである。

南京事件の本質は「捕虜」問題に非ず

 一つは、放映と著書に「南京事件」と冠しながら、主たる部分が「兵士たちの日誌とその検証」による“捕虜問題”であり、「南京事件」=「捕虜問題」と勘違いさせる危惧である。

 そもそも、「南京事件」の主たる争点は、中国が高校で使用する教科書『世界近代現代史』にある「1937年12月~1938年2月の間だけでも南京一都市において、30万人もの武器を持たない中国人が、日本のファシズムの残酷な大虐殺に苛まれた」とする内容の真偽である。

 すなわち「約6~7週間」に「南京一都市」で「30万人」もの「武器を持たない中国人=一般市民」の「大虐殺」があったか否かである。

 中国がその事実を示すものとして開設している展示館は「侵華日軍南京大屠殺遇難同胞記念館」と表示され、日本では分かりやすく、約(つづ)めて「南京大虐殺」と称することが多い。

 同館の至る所に「30万人」とあり、期間は「1937.12.13-1938.1」と明記されている。

 中国共産党の決定と言われるこの内容は、南京攻略戦で南京が陥落して以降の約40日間で、捕虜や城内の市民30万人を日本軍が殺害したというものである。