(舛添要一:国際政治学者)

 3月12日、テクノユニット「電気グルーヴ」メンバーで俳優のピエール瀧がコカインを摂取していたとして麻薬取締法違反で逮捕された。彼の出演しているイベント、テレビ・ラジオ、CM、映画などが、キャンセルされたり、出演者が差し替えされたり、大変な騒ぎになっている。犯罪は許されるべきではないが、過剰な自粛ムードに辟易した私は、翌13日の夜、以下のようにツイートした。

<品行方正な芸人に魅力はない。ピエール瀧、新井浩文、勝新太郎。芸人はマージナルマンである。だから、常人に不可能な創造ができる。面白くもないエンタメは定義矛盾だ。品行方正でもやぶな医者は要らない。芸人も同じ。道徳が支配する国に芸術や文化は育たない。勿論犯罪を称賛しているのではない。>

 このツイートに対して、通常の200倍くらいの反響があったが、批判も多かった。大炎上である。

わずか140字のコメントを最後まで読まずに「反論」

 私がこの短い文章で述べたことの主題は、まずは芸人論である。私にとって「品行方正な芸人」は魅力を感じないのだが、これは私的な意見なので、異なる意見の方が沢山いて当然である。ただ、芸人が不祥事を起こすと、皆が道学者ぶって高い倫理を求めるが、これは私に言わせれば、全ての芸術家にそれを求めるのは「木によりて魚を求む」がごとしである。

 その他、「麻薬と婦女暴行を同一視するな」という批判もあった。また、コカインと言えば「パンツにコカインとマリファナ」で逮捕された勝新太郎を思い出したので記したのだが、故人については、十分な説明がないと「忘れられる権利」との関係で放送しないという放送コードがあることも知らされた。だからその後、出演したインターネットテレビ・アベマTVでは、勝新太郎の名前は削除されて放送されている。