「サステナブル・ブランド国際会議 2019 東京」の基調講演に登壇したセイコーエプソンの碓井稔社長

「社会課題を解決しない限り、企業の存在意義は生まれません。長期的に見ればそれは明らかです。だからこそ企業は、その実現と短期的な利益の両立を求めるべきです」ーー。
 2019年3月6〜7日に開催された「サステナブル・ブランド国際会議2019東京」。その中でセイコーエプソンの碓井稔社長は、こう自身の考えを述べた。
 同社は、主力のプリンター事業において、業界の主流だったカートリッジ方式から脱却し、環境負荷が大幅に低いエコタンク方式を採用。さらにオフィスで紙を再生産できる「PaperLab(ペーパーラボ)」を開発するなど、サステナビリティ(持続可能性)に関連するイノベーションを急速に進めている。これらの取り組みが続く原動力は何なのか。そのヒントは経営理念にあるようだ。碓井社長の話から迫っていく。

業界の主流から転換した、エプソンのプリンター事業

 SDGsなどにより、企業のサステナビリティを意識した取り組みが加速している。しかし一方で、その動きと企業利益の相関性を疑問視する声もある。この点について、碓井氏はどう考えているのだろうか。

碓井稔社長(以下、敬称略) 短期的に見れば、そのような見方もできます。しかし、そもそも企業は社会的な課題を解決し、お客さまの期待に応えなければ存在意義は生まれません。それは長期的に明らかで、だからこそ社会課題の解決を見据えながら、あわせて短期的な利益を両立することが経営に求められます。

 良い例が、我々のプリンター事業です。オフィス向けプリンターの主流は、トナーカートリッジを使ったレーザー方式でした。これは印刷工程が複雑であり、使用中のメンテナンスが高頻度で必要となります。そのため、ビジネスモデルとしてはプリンター機器を廉価で販売し、その後のサービスコストや交換コストで利益を上げる形でした。