正恩氏は「意味ある」言動を、制裁解除に絡みトランプ氏けん制

1回目の米朝首脳会談が行われたシンガポール・セントーサ島のカペラホテルで、手を振るドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(2018年6月12日撮影)。(c)SAUL LOEB / AFP〔AFPBB News

(右田早希:ジャーナリスト)

 トランプ大統領と金正恩委員長の2回目の米朝首脳会談が、今週2月27日と28日に迫っている。今回の開催場所は、ベトナムの首都ハノイである。

 なぜ開催場所がハノイに決まったのか、また主催するベトナムにはどんな思惑があるのか。ベトナム政府関係者に、緊急インタビューを行った。

ベトナムは北朝鮮にとって東南アジア最大の友好国

――前回、昨年6月の米朝首脳会談は、シンガポールで開かれましたが、今度はハノイ。ベトナム政府としては、水面下でどのような動きをしていたのですか?

「昨年のシンガポールでの米朝首脳会談は、大成功を収めました。会談そのものもそうですが、主催したシンガポールにとっては、1965年の建国以来、最大規模のイベントとなったのです。米朝の政府関係者はもとより、世界各地から集まったジャーナリストは総勢3000人に及び、30億ドルもの経済効果をもたらしました。あの後、世界からの観光客も急増したと聞いています。あるシンガポール政府の人は、『これまで欧米の旅行サイトでは、シンガポールはあたかもマレーシアの植民地のような表記になっていたが、あの会談の後、ようやく独立国と認められた』と笑っていました。

 そうした話を、昨年ASEAN(東南アジア諸国連合)議長国だったシンガポールの関係者たちから聞き、次回の米朝首脳会談の候補先として、同じASEANの仲間であるベトナムを推してほしいとお願いしたのです。

 同時に、アメリカと北朝鮮に対しても、強い働きかけを行いました。2017年11月にベトナム中部のダナンでAPEC(アジア太平洋経済協力会議)を実施しており、トランプ大統領にもベトナムを気に入ってもらっています。

 一方の北朝鮮とは、1950年1月に国交を樹立しており、ベトナム、中国、北朝鮮、ラオスというアジアの社会主義国の『血盟関係』にあります。金日成主席は1958年と1964年に訪越し、ホーチミン主席も1957年に北朝鮮を訪問しています。現在でも、東南アジアにおいてベトナムは、北朝鮮にとって最大の友好国で、ハノイの中心部には、東南アジアで最大規模の北朝鮮大使館があります。

 そうしたことから、アメリカと北朝鮮に対して、強い働きかけをおこなったのです。両国からよい感触が伝わってきたのは、年明けになってからでした」