春夏連覇を達成した大阪桐蔭の選手たち。彼らが初めて感情をあらわにした瞬間だった(写真:岡沢克郎/アフロ)

 史上初となる2度目の春夏連覇。この10年で7回の日本一。決勝まで行けば無敗――。どの数字をとっても大阪桐蔭の強さは他を大きく圧倒している。
 その中でも記念すべき100回大会に登場した大阪桐蔭は強かった。金足農業も素晴らしかったが、やはり大阪桐蔭を称えるべきであろう。大阪桐蔭の何が他の高校と違ったのか。なぜここまで強いのか。現地で取材をしていたスポーツジャーナリスト、田口元義氏が明らかにする。(JBpress)

金足農・吉田も脱帽した藤原、根尾の技術

 大阪桐蔭の西谷浩一監督は決勝戦を前に、選手への期待をこう口にした。

「金足農業さんの吉田(輝星)君は、今が一番いい状態にあると思います。打線も小技を駆使したしぶといチーム。大会中に全員の状態が上がってきていますし、対戦するのが嫌と言いますか、粘り合いになると思います。そういう試合で、根尾(昂)や藤原(恭大)、もちろん他の選手にも言えることですが、プレッシャーを跳ね除けてくれるのか? これまで地に足をつけてやってくれていますから、今日はその真価が問われるでしょうね」

 史上初となる2度目の春夏連覇を懸けた大一番。初戦から4試合連続2桁奪三振を含む5試合連続完投とマウンドに仁王立ちし続ける「大会ナンバー1」投手、金足農の吉田を前に、大阪桐蔭は、まさに地に足をつけ、圧巻の野球を見せつけた。

 2点をリードして迎えた3回、まず、藤原が観衆の度肝を抜く。

 1死一塁から二遊間に鋭いゴロを放つと、トップスピードで二塁を陥れる。このとき、金足農のセンターは長打を警戒し定位置のやや後方を守っていたとはいえ、打者走者心理としては二塁打を予め想定できるような打球ではない。それを、藤原はいとも簡単に、そう思えるほどに実現させた。

「自分はホームランというよりは野手の間を抜くバッティングをして、脚でひとつでも多くの塁を稼ぐというのが持ち味。4番を打たせてもらっていますけど、一発はたまに出ればいいかなって思っています」