イタリアで製造された3Dプリンター製自動車(出所:Polymaker社ウエブサイト) 確かに車の形をしている。しかし、日本の公道を走れるかは疑問。生産数も日本で作られる自動車とは比べ物にならないほど少ない。

 これからは3Dプリンターで何でも作れる。しかも速くて簡単だ。金型もいらないし、プレス機も不要、射出成型機やダイキャストマシン、圧延機、工作機械もいらない。

 実際、3Dプリンターでもの作りをする試みは盛んである。米GE(ゼネラル・エレクトリック)がジェットエンジンの部品を作ったかと思えば、3月にはイタリアで3Dプリンターを使って車体を作った電気自動車の量産が発表された。

 3Dプリンターが、すべてのもの作りを置き換える。自動車も3Dプリンターによって、プリントされて製造されるようになる。アディティブ革命と称し、そんな3Dプリンターの夢が語られるようになっている。

 一方で、金型、プレス、射出成型、ダイキャスト、展伸材製造、工作機械に関わられている方、言い換えれば現在もの作りの根幹を支えている方からすると、悪夢でしかない。

 そんなことが可能なら、これまで磨いてきた技術がいらなくなるどころか、自分の仕事もなくなってしまいかねない。

 しかし、そんな心配は一切する必要はないようだ。3Dプリンターは決してもの作り全体に革命を起こすものではないからだ。

3Dプリンターは確かにメリットがある

 3Dプリンターとは、金属やプラスチックで描いた断面を積み重ねていくことで、自由な形状のものを、プリンターが印刷をするように作っていくことができるものである。

 実際のもの作りで多用されるであろう金属3Dプリンターでは、金属粉をレーザーや電子ビームで溶かしながらなぞることを何度も繰り返し成形していく。なぞられた部分が溶けて固まった層となるが、これを何層も繰り返すことによって、3次元の形ができていく。

 レーザーや電子ビームは金属の粉の上でどのような形でも描けるので、理論上はどのような形のものでも作れる。

 これまでの製法では、作れる形状に制約があった。例えば、プレスは金属が曲がる範囲でしか成型ができない。

 工作機械では切削工具が入る場所しか加工できない。射出成型機では内部に複雑な空洞を作るような形状は無理であった。

 3Dプリンターではそうした制約がなくなる。これまでより形状の自由度は大きい。