ベトナムの代表的な世界的ブランド、「カイシルク」。民族衣装のアオザイから、スカーフ、ネクタイ、小物まで多彩なデザインで日本人にも大人気だ(筆者撮影)。

 「ジム・トンプソン」と言えば、タイのシルク王と呼ばれた米国人実業家、ジム・トンプソンが作った東南アジアを代表する世界的ブランドととしてあまりにも有名だ。

 東南アジアにはもう1つ、有名な高級シルクブランドがある。「カイシルク」(Khaisilk)。

 こちらはベトナムのシルク王、創業者のべトナム人の実業家、ホアン・カイ氏の名を冠したシルクメーカーで、シルクを素材とした絹製品を扱っており、ベトナム産の高級贈答品や土産物の代名詞として長年、内外で愛されてきた。

ベトナムのファッション界を牽引する存在

 文字通り、ベトナムを代表するシルクブランドで、ファッション業界を牽引する存在でもあり、多くの人気モデルや歌手といった有名人も顧客に抱えることで知られる。

 世界的な繊維大国で知られるベトナムでは、昔からシルクを国の重要な交易品として扱ってきた。代表的なのは民族衣装のアオザイだが、近年ではデザイン性に富んだスカーフ、ストール、ネクタイ、ジャケットなど多種の絹製品を生産、輸出にも積極的だ。

 中でも、「カイシルク」は、ベトナムで最も上質なシルク製品で知られてきた。

 ハノイやホーチミンに高級ブティックを構えるほか、五つ星ホテルにもテナントで入っており、アマゾンなどのネットショッピングではすぐに完売するなど、日本でも有名人の多くに愛用家がいる。老若男女を問わず、ファン層は多彩だ。

 しかし、その世界的ブランドのカイシルクが、いま存続の危機に見舞われている。

 「シルク0%」――。

 カイシルクは、1989年の創業以来、全商品が「ベトナムの100%高級国産シルク」で生地、生産工程もすべてベトナムと広告、販売してきた。