長野県の中川村・飯沼地区の棚田。ここで作られるお米は全量、米澤酒造で酒造りに使われる。

 長野県中川村に全く新しい造り酒屋がまもなく誕生する。

 美味しい空気と美味しい水、そして美味しいお米。何を取っても日本酒造りには最高の環境にある。

 信州長野県にはかつて160の造り酒屋があったという。しかし、消費者の嗜好の多様化などで日本酒の消費量は減り、今では80にまでその数を減らしている。

 それでも全国で2番目に多いというが、かつての勢いはどこにも見当たらない。その原因は何なのか――。

市場が萎むときこそチャンス到来

 確かに消費者の嗜好は多様化している。日本各地でワインが作られるようにもなった。若者の酒離れもある。古い日本酒から消費者が離れていくのは仕方がない・・・。

 そう考えるのは普通なのだろう。日本酒に限らず衰退期にある産業ではそう考える人が多い。しかし、それは“普通”の考えではなく、実は淘汰される側の考えなのである。

 市場が小さくなっているときでも成長する企業はある。むしろ、このような自滅的な考えを持つ人が増えている時期こそ、新しく挑戦する側には有利とも言えるのだ。

 中川村に12月初旬に新店舗がオープンする造り酒屋もまさにそういう挑戦者である。

 水と米と環境、酒造りに三拍子揃ったところに、超一流の経営と大きな資本が加わった。名前は米澤酒造。

 最初に全く新しい造り酒屋と書いたが、実は米澤酒造には古い歴史がある。明治40(1907)年創業というから、そのブランド「今錦」は110年の時を刻んできた。由緒ある造り酒屋である。