その金融商品は本当に顧客本位のものなのか

 異色の官僚ともいわれる森信親長官の就任以降、金融庁は投資信託の販売手法や地銀の経営姿勢など、金融業界に対する指導を強化してきた。あまりの積極ぶりに一部からは統制経済の再来との声も聞かれる。

 官による介入は、市場メカニズムを歪めてしまう可能性があることから、できるだけ実施しない方がよいというのが一般的な理解である。だが、金融庁による今回の介入は、基本的にすべて正しく、市場に対してプラスの効果をもたらす可能性が高い。そして「正しい」がゆえに、長い目で見たときの影響もまた深刻なものとなるかもしれない。

ターゲットになったのは毎月分配型投信

 このところ、金融庁がもっとも厳しい目を向けているのが投資信託の運用・販売手法である。証券会社のリテール部門の多くは、個別株の売買で利益を上げることができなくなっており、経験の浅い個人投資家を対象とした投資信託の販売に力を入れている。銀行も窓販が解禁になって以降、積極的に投資信託を販売するようになってきた。手数料獲得について行員に厳しいノルマを化すところもあり、証券会社もビックリするほど積極的にハイリスクの商品を推奨している。

 だが金融リテラシーがそれほど高くない顧客にこうしたリスク商品を販売するのは容易なことではない。このため商品開発においては「経済的利益」よりも「心地よさ」を重視する傾向が強くなり、結果的に投資家の利益にならない商品が増えた。その代表的な例が毎月分配型の投資信託である。