羽田空港では「駐禁エリア」で「客待ち」をしている白タクが目につく(筆者撮影)

「こんなに派手な違反をしていいんですか。同業の目もありますから勘弁してくださいよ」

 千葉県の零細ハイヤー会社X社に勤務するYさんは、ことあるごとに経営者に訴えていた。

 X社は、最近、ハイヤー業の事業免許を取得したばかりの会社である。大手タクシー会社で業務経験を積んだYさんにとって、X社のコンプライアンス意識の低さは目に余るものだった。

 X社による違反の1つに、白昼堂々と行われる「区域外営業」がある。日本では、タクシーやハイヤーは需給量を調整するために法令で営業区域を定められている。タクシー会社は、配車場所・降車場所のどちらかが、定められた営業エリアに入っていれば配車ができる。だが、配車場所・降車場所のいずれも営業エリア外となる場合、客を乗せてはならないことになっている。

 ところがこのX社は営業エリアを遵守していない、というのだ。

「羽田空港にお客さんを迎えに行き、都内のホテルに送り、その後、新幹線で大阪に向かうお客さんを『回送』で追いかけて再び大阪で乗せる、といった違反を堂々とやってのけるのです」とYさんは呆れ返る。

「例えば、大阪までタクシーやハイヤーで行く場合、ざっくり20万円はかかる。にもかかわらず、『大阪まで8万円で行ける』と言って客を乗せるんです。こんな値引きが常態化すれば、日本のタクシー業界は大混乱に陥ります」