出生率を上げればすべての問題が解決するというのは幻想にすぎない(写真はイメージ)

厚生労働省から最新の人口推計が発表された。人口減少問題は多くの日本人にとって、当たり前の話となっているが、そうであるがゆえに盲点も多い。人口推計は最もハズレが少ない統計ともいわれており、推計通りに人口が推移する可能性は極めて高い。出生率の上昇では問題は解決しないという現実を直視し、正しい制度設計を行っていく必要がある。

これまでは人口減少社会ではなかった?

 厚労省の国立社会保障・人口問題研究所は4月10日、「将来推計人口」を公表した。将来人口の推計は国勢調査の結果をもとに5年に一度行われており、今回の推計は2015年の調査をもとにしている。推計によると、1人の女性が生む子供の数が今と変わらない1.44人とした場合、日本の総人口は2053年に1億人を割り、2065年には、現在より3割少ない8808万人になるという。

 人口が減りつつあるという現実はほとんどの人が認識しているので、このニュースを聞いても「ああ、またか」という感想を持った人も多いかもしれない。だが現実に、どの程度のスピードで人口が減っているのかについて、皮膚感覚で理解している人は少ないはずだ。

 実は、日本は人口減少社会といわれているが、実際はそれほどでもない。総務省によると2016年12月1日時点の日本における総人口の概算値は1億2692万人だが、前年比の減少率は0.13%に過ぎない。2000年の人口は約1億2693万人、2010年の人口は1億2806万人だったので、総人口そのものはあまり変化していなかった。これまでは「人口減少社会」というよりは「人口横ばい社会」だったというのが正しい。