韓国の朴前大統領、検察に出頭 「誠実に聴取に応じる」

韓国ソウルの検察庁舎に到着した朴槿恵前大統領(2017年3月21日撮影)。(c)AFP/KIM HONG-JI〔AFPBB News

 2017年3月21日、韓国の朴槿恵(パク・クネ=1952年生)前大統領が検察に召喚された。

 大統領職から罷免になってから11日目に、賄賂罪などについて調査を受けることになった。大統領経験者がその後、捜査を受けるという不幸な道をまた繰り返すことにってしまった。

 3月21日、午前6時半頃。筆者は朝食会に出かけるため、タクシーでソウルの中心部に向かった。

厳重警備

 すると、突然、ぎっしりと止まっている警察車両が見えた。朝早い時間帯だというのに、あちこちに機動隊員の姿も見える。

 この日、朴槿恵氏の出頭に備えてソウル中央地検を警備するためだった。韓国メディアによると、前大統領の支持者とこれに反対する団体がそれぞれ近くで集会開催を予定しており、「不測の事態」に備えて2000人もの警官が動員されたという。

 「大統領経験者の検察召喚」は、8年ぶりのことだ。当時、盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏は中堅企業経営者から不正資金を受け取ったことなどの容疑で検察に召喚された。このときも、釜山(プサン)近郊からソウルに車で向かう前職大統領の様子が放送で中継された。

 3月12日、朴槿恵氏は罷免を受けて青瓦台(大統領府)を出てソウル南部の江南(カンナム)にある自宅に戻った。このときも、取材陣の車両と警備車両が激しいカーチェイスを演じたが、21日も同じような追跡劇が繰り広げられた。

 3月21日午前9時15分、朴槿恵氏は自宅を出てソウル中央地検に向かった。白バイの先導を受け、何台もの警備車両とともにソウル市内の一般道を疾走する。その後を新聞社や放送局のカメラ車両が追いかける。多くの放送局はこの模様を生中継した。

フォトライン

 「フォトライン」。韓国には珍しい慣習がある。検察に召喚された政治家や財閥総帥など「大物」は、検察庁舎の入り口で一度立ち止まり、カメラのフラッシュを浴びながら、短い質問に答える。

 この場で「対国民謝罪」をしてから検察の調査を受ける。受け取りようによっては一種の「社会的制裁」でもある。いつからこんなことが始まったのか。

 韓国メディアによると、1993年、現代財閥の創立者である鄭周永(チョン・ジュヨン)氏が、前年の大統領選挙に出馬した際の選挙法違反で召喚されたことがきっかけだったという。

 この際、興奮した取材陣が鄭周永氏のもとに殺到し、カメラが鄭周永氏にぶつかるなどして怪我をしたという。これ以来、「大物」は「フォトライン」に立って、カメラの前でひと言しゃべることになったという。

 ちなみに朴槿恵氏が検察に召喚される前日の3月20日は、鄭周永氏の16周忌だった。