アパホテル代表、「反ユダヤ」発言で再び物議 南京事件否定に続き

都内でアパグループに抗議するデモを行う在日中国人ら。NURPHOTO提供(2017年2月5日撮影)〔AFPBB News

 札幌での冬季アジア大会は、日本が金メダル27個で韓国や中国を抑えて1位となり、来年の平昌冬季五輪への大きな弾みとなった。運営面でも小さなトラブルはあったが、全体的には関係者の満足度は高く、成功裏に終わったと言える。

 開催直前には、中国がアパホテルに備えつけている「南京大虐殺」や「慰安婦の強制連行」はなかったとする書籍(『本当の日本の歴史 理論近現代史学Ⅱ』だと言われる)の撤去を求めてきた。

 これに対しアパグループ代表は「(中国)政府が一民間企業の活動を個別に批判することに対しては疑問を感じる。書籍を撤去しない方針に変更はない」とコメントした。

 日本に対する歴史認識では中国と共同歩調をとってきた韓国も、「右へならえ」の姿勢で中国に1日遅れで同様の要求をしてきた。

 しかし、アパグループは大会の会場にあるホテルでの撤去に応じただけで、小の虫を殺し大の虫を生かしたという点で、本当の成功者はアパグループであり、また「真実の歴史」の勝利であったと言えよう。

国家主導の「言論統制の輸出」

 中国政府が一民間の所業にクレームをつけ、応じなければ選手団の宿泊をキャンセルすると脅しをかけてきたことは、中国人民にこうした本が見られて中国共産党や政府のウソがばれることを恐れたわけで、図らずも「南京大虐殺はなかった」という真実が暴露されたことを意味している。

 アパグループの元谷外志雄代表は撤去しない旨を公言したうえで、「日本は『押せば引く国』という悲哀を味わってきたが、本当のことを向こう(中国)の方にも知ってもらう必要がある」と指摘した。

 同時に、「(リスクを避けるため)どの国の人でも(全利用者の)10%以内にしていこうとやってきた。その規制に達する前のいいタイミングで今回のことは起きた」と、運営上からも中国人に偏らない方が望ましいとした。

 「爆買い」に煽られて店舗の拡張や商品の大量入荷をした営業が、翌年には中国政府の一声で成り行かなくなる悲哀を経験したばかりであった矢先で、営業上からも素晴らしい判断と言えよう。

 中国が政府主導で中国国内の旅行会社やインターネットの予約サイトに、アパホテルのサービスと広告を取り扱わないよう求める行動に出たことはこれまでもしばしばあったことで意に介することではなかった。

 しかし、日本の企業にまで中国式言論統制を強要してきたのである。新聞などのマスコミが「他国の特定企業に対するボイコットを強制するのは極めて異例」と書いていたのも当然であろう。

 中国本国の動きに呼応するように、日本で生活している中国人企業経営者、会社員、留学生などが中心となって、抗議デモを行う「中日民間友好委員会」を立ち上げ、約300人が新宿でデモ行進を行ったことは注目された。

 「注目された」というのはほかでもないが、中国政府の威令が在日中国人にも徹底することを示す好例であるからである。日本の災害時などの非常時連絡網以上に、中国の連絡網はしっかりしているのではないかと思わせる事象はすでにいくつかあった。