大学の「キャリア教育科目」は、なぜここまで増えていったのか。(写真はイメージ)

 前回の記事「大学が就職支援をキャリア支援に拡張した本当の理由」では、2000年代半ばから後半にかけて、各大学のキャリアセンターの学生支援が、狭い意味での「就職支援」から、より幅の広い「キャリア支援」へと拡張していったこと、その背景には、「大衆化の衝撃」に見舞われて以降の大学では、端的に言って「大学3年次の就職支援から始めたのでは、支援が間に合わない」という、切迫した実情があったことに触れた。

 今回は、ちょうど同じ時期に設置が進み、その後は日本中のほとんどの大学に普及した「キャリア教育科目」について見てみたい。

キャリア教育科目とは

 念のために、ここでいう「キャリア教育科目」とは、大学の正規の教育課程のうちに組み込まれ、単位化された、学生のキャリア形成支援のための科目のことを指す総称である。

 実際の科目名は、当然のことながら、大学によって異なっており、思いつくままにあげると、「キャリアデザイン」「キャリア形成論」「仕事と人生」「大学と社会」などがある。複数科目を展開している場合には、上記のような基礎レベルの科目とは別に、キャリア形成支援の特定の柱を科目にした「就業力育成」「職業選択論」「日本企業と就職事情」「インターンシップ」「キャリアプランニング」といった科目を置いている場合もある。

 どの程度の科目数を設置するのか、これらの科目を選択科目にするのか必修科目にするのかも、それこそ大学によって事情が大きく異なっている。誤解をおそれずに言ってしまえば、上位ランクの大学の場合には、キャリア教育科目の設置数は、それほど多くはなく、かつ自由選択科目とされることが圧倒的であろう。

 逆に、中・下位ランクの大学の場合には、設置数が増え、必修科目にされる割合も高い。中には、1年次から4年次にわたって15科目以上のキャリア教育科目を設置し、そのうちの10単位程度を必修にするといった大学も存在している。