サムスン副会長の逮捕状請求、韓国・国政介入疑惑

特別検察の求めに応じて出頭したサムスン電子の李在鎔副会長〔AFPBB News

 ソウル中央法院(地裁)は2017年1月19日、特別検察官が請求していたサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン=1968年生)副会長に対する逮捕状請求を棄却した。

 特別検察は李在鎔副会長などサムスングループ首脳を在宅訴し、サムスン捜査をてこに大統領に迫る方針に変わりがないという見方が有力だ。李在鎔副会長は危機を突破して3代目総帥の座を固められるか。「悲運の皇太子」になるのか。正念場だ。

 19日未明、ソウル中央地裁は、「逮捕状請求棄却」の判断を下した。

拘置所で15時間待機

 地裁での審問は18日の午前10時30分に始まった。午後2時10分に終わり、地裁が検討に入った。李在鎔副会長はソウル拘置所で「待機」になった。待つこと15時間近く。19日午前5時前に「棄却」が決まった。

 李在鎔副会長は、ソウル拘置所から、グループ首脳が徹夜で待機していたソウル・江南のサムスン本社に向かった。

 逮捕状が出るかどうかは、逃亡の恐れがあるか、罪を重ねるかなどの緊急性と証拠隠滅の恐れがあるか、罪状に拘束すべき妥当性があるかなどで判断する。

 今回の場合、争点になったのは、「妥当性」だった。

 特別検察官制度は、そもそも、政治的な問題についてはより中立的な捜査陣が手がけるべきだとして国会で特別検察官の設置を決める。今回も、検察の捜査を引き継いで特別検察官が任命された。

贈賄か強要か

 特別検察が捜査をしているのは、「大統領の犯罪」だ。このためにまず、サムスングループに切り込んだ。

 サムスングループは、大統領の長年の友人である崔順実(チェ・スンシル=1956年生)氏が設立に深くかかわったとされる2つの財団や崔順実氏の姪が設立した企業に資金を拠出した。さらに乗馬選手である娘に馬を購入し、訓練のために設立した企業にも資金を出した。

 なぜ、資金を出したのか。

 この点で、特別検察とサムスンの見解は真っ向から対立する。

 資金を拠出する直前に、サムスングループは、グループ企業であるサムスン物産と第一毛織を合併させた。サムスングループは否定するが、この合併は李在鎔副会長のグループ支配力を強化するためだったと特別検察は見る。

 2社の合併には、一部株主が反対したが、大株主だった国民年金公団が賛成したことが大きな意味を持った。

 特別検察は、大統領が国民年金公団に合併賛成を指示した。サムスングループはこの見返りに資金を出したという筋書きを描いた。

 職務権限があり、対価性もあることになり、これらの資金供与が、「贈賄」にあたるとの主張だ。