ポケモンGOで「カオス状態」の豪公園、ポケストップの設定解除

豪シドニーの名所、オペラハウスの外で、「ポケモンGO」のゲームをするために集まった人々(2016年7月15日撮影)〔AFPBB News

 プレーヤーの位置情報を陽に扱うARゲーム「ポケモンGO」の全世界的な流行で新たに注目を集めるようになったオーグメンテッド・リアリティ。

 拡張現実感などと邦訳されますが、この技術の持つメリットと隠れたリスクを考えるELSI=倫理的、法的、社会的な観点からの開発に先立つ技術検討プロトテクノロジカル・アセスメントを基礎から一つひとつお話ししています。

 かつてのARは、例えばMITメディアラボの石井裕さんが提唱、推進されたタンジブル・ビット(現在のMITのHPはこのようになっていますが)のプロジェクトのように、仮想世界と目の前の現実とが重層する技術としてスタートしたものでした。

 石井さんがNTTからMITに移られたのが1995年、私は96年からNTT基礎研究所にサポートしていただいて音楽の基礎を調べ始め、99年に人事があっていまの研究室を構えましたので、この20年ほどVR(バーチャルリアリティ:仮想現実感)、MR(ミクストリアリティ混合現実感)、AR(オーグメンテッドリアリティ:拡張現実感)などと呼ばれる研究の進展を身近に見てきました。

 VRは3Dモニターや映画「アバター」などが典型的な、現実には存在しない環境があたかも目の前に広がっているかのごとくに感じさせる技術です。

 私も2001、2002年頃はシャープが主唱していた「3Dコンソーシアム」の立ち上げなどに若干加わりましたが、ほどなく様々な理由から離れてしまい、その頃の知人がシリコンバレーで成功されたりするのを見て自分の先見の明のなさを感じたものでした。

 これに対してMRとかARというのは定義が様々ですので、初期的な応用から跡づけると、例えば「遠隔会議システム」の電子黒板というものがありました。

 これは東京と大阪に分かれて会議しているとき、こちらで電子黒板に書いた文字が大阪にある兄弟機の黒板にも表示される。そこに大阪側の人が文字を書き加えたり、消したりすることもできる。

 そうやって議論した結果を電子的に保存ができる。手で書いた文字だけれど自動認識ですぐにワープロファイルの情報として取り出すことができる・・・。

 こうした形で、現実世界での私たちの行動と、必ずしも私たちが手に取ったり触ったりできないかもしれないデジタル情報とを結びつけていく技術が発達し始めたわけです。

 この頃は、インターネットが民生公開された直後で、善くも悪しくも国際社会は今のような情報環境ではありませんでした。

 ちなみに上記のような遠隔電子黒板は先ほどの石井裕さんの出世作の1つにほかなりません。あの頃のNTTには面白い人が沢山いました。2次元バーコードなども長らく普及しませんでしたが、世に出るとあっという間だった。今は昔の観があります。