「世界経済への挑戦に対応を」=ロシア大統領と結束誇示-中国主席

中国・北京で儀仗(ぎじょう)兵を閲兵する中国の習近平国家主席(左)とロシアのプーチン大統領(2016年6月25日撮影)〔AFPBB News

文中敬称略

 中国の傅瑩(Fu Ying)・全人代外事委員会主任委員が、米外交雑誌「Foreign Affairs」の1/2月号に「中国から見たロシア」と題した露中関係論を寄稿している。

 その結論から見ると、「米国の今の動きはアジアにとって危険である一方、中露には反米ブロックを形成するつもりなど毛頭ない」という米国向けのアピールが狙いだったようだ。

 中国の米国対策でロシアが出汁に使われた感がなきにしもあらずだが、露中関係は第三国を敵視することなく2国間の協力により互いの目標を達成し合って行くという、安定した戦略的パートナーシップであると誇らしげに説き、歴史を乗り越えてそのような関係構築に成功したことは、大国同士がどう平和裏に共存できるかを示す好例である、とまで述べる。

 米国もこれに見倣ってほしい、というところだろう。それゆえ彼女に言わせれば、露中関係を否定的に捉える西側の互いに相反する2つの見方 - 露中両国の現在の関係は便宜上の結婚に過ぎず、いつかは破綻する運命にある、あるいは、戦略面や思想面で露中が反米・反西側同盟を形成する - はいずれも的外れでしかない、ということになる。

ロシアと中国で見識の差

 しかし、彼女は少なくとも1つだけ間違っている。両国関係を否定的とは言わずとも、彼女とは異なった目で見ているのは西側だけではない、ロシアの知識人やメディアも、なのだ。

 傅瑩の説くように、露中が同盟関係には立ち至っていない点には同意しつつ、カーネギー財団モスクワ・センター所長のD.トレーニンは今の露中関係を、「決して対立はしないが、常に同調とも限らない。露中の間の距離は近い、しかし近過ぎもしない」と表現する

 そして、「中国と強固な同盟が作れなかったことは、ロシアの東進政策での失敗とは言えまい、なぜなら過度にロシアが中国に依存することを避け得たから」と付け加えることを忘れない。 

 こうした地政学的な観点は、物事を冷めた目で見るのが仕事だから、その種の表現がロシア側の対中熱気の薄れを表象、とまでは言えまい。それがあるとすれば、前回このコラムでも触れたように、両者の経済関係で、だろう。

 トレーニンの下で、カーネギー財団モスクワ・センターのアジア・太平洋方面部長を務めるA.ガブーエフは、ロシアが自国の投資環境の改善を果たさぬままに東進政策を加速し始め、それが世界の資源価格下落と中国の成長鈍化にぶつかってしまった不幸を指摘する

 他のロシアの論者も、これらの要因で中国企業がエネルギー分野への投資に慎重になってしまったと嘆き、ロシア中銀は、中国経済の1%の減速がロシア経済の0.5%の減速をもたらすと弾く。

 昨年の露中貿易額は対前年比で約30%と大幅に減少し、ロシアは中国にとって16番目の貿易相手国でしかなくなってしまった。今年に入ってからも1~4月で昨年同期の2.7%増に過ぎず、2020年で貿易総額2000億ドル達成の看板はまだ下ろしていないものの、ロシア政府高官からはこれに懐疑的な溜息が聞こえんばかりだ。

 貿易の減少は、それでもまだ短期的な話として片付ける余地があるかもしれない。しかし、中国の対露直接投資の額が昨年で5.6億ドルと、中国の対外直接投資全体の0.5%でしかないとかになると、ロシア側の失望感は否が応にも増してしまう。