紅海に面したサウジアラビアの都市マディーナ(資料写真)

「OPECが6月2日に開く総会で(減産に向けた)協調行動に関して決定する公算は小さい」 5月21日、ロシアのノヴァク・エネルギー相はロシア国営テレビのインタビューでこう述べた。

 OPEC総会を前にイラン石油省の幹部が依然として増産に前向きな姿勢を示すなど、供給拡大の動きに歯止めがかからない。そのような状況にあっても原油価格が1バレル=50ドル前後で高止まりしているのは、世界各地で突然の供給途絶をもたらす事象が相次いでいるからである。

 まずカナダでは5月初めに発生した大規模な山火事によって原油生産量が日量約100万バレル減少したままである(23日からオイルサンド企業は操業を再開した)。また、ナイジェリアでは武装勢力が5月に入って相次いで主要パイプラインを爆破したため、原油生産量は日量約80万バレル減少した。

 産油国の供給途絶リスクはさらに高まっている。

 その第一候補はベネズエラである。ベネズエラの原油生産コストが高い(1バレル=70~80ドル)ため低油価の下で、国営石油会社PDVSAが資金難に陥っている。また、先週にはマドゥーロ大統領が「政府転覆計画がある」として非常事態を宣言した。政情不安が高まれば、年末までに原油生産量は同50万バレル以上減少すると見込まれている。

 また、5月21日付共同通信によれば、カザフスタンの主要各都市で反政府デモが行われた。最近、カザフスタンでは野党の呼びかけでデモが頻発し、政権側は神経をとがらせ強権的な手法を強めている。カザフスタンの原油生産量は日量160万バレルと安定的に推移しているが、国内の混乱拡大が今後の原油生産に影響する可能性が出てきている。2014年半ば以降の原油価格急落でベネズエラとともに「危機」が取り沙汰されてきたロシアも、隣国カザフスタンの政情不安について神経質になっているだろう。