先進諸国の賃金横ばい、国際労働機関が警告

都内の道路を歩く人々(2014年11月28日撮影、資料写真)。(c)AFP/Toru YAMANAKA〔AFPBB News

 経済の好循環に向け期待された賃上げだったが、今年も力不足だった。そこで安倍政権は、好循環を力づくでも加速させるため、別の手段に訴え始めた。具体的には、(1)同一労働同一賃金を是とする派遣社員やパ-ト社員の賃上げ、(2)サービス残業に対する監督の強化、(3)下請けいじめ対策、などだ。

 (1)同一労働同一賃金を是とする派遣やパ-トの賃上げについては、一億総活躍国民会議が5月に取りまとめるプランに具体策が盛り込まれる見込みだ。

 基本的な方向性は、正社員の賃金を100とすれば64にとどまる非正規社員の賃金を、欧米並みの80程度に向けて引き上げる方向で調整されている。ただし、賃金の比率だけを見るのなら、正社員の賃金を80に引き下げる企業が続出することも懸念されている。

 (2)サービス残業に対する監視の強化では、厚労省は4月に違法な長時間労働に対する監督指導を強化する部隊として「過重労働撲滅特別対策班(通称「かとく」)」を設け、全国47の労働局に新設の「過重労働特別監督監理官」を配置した。また、立入調査の基準となる残業時間を月100時間超から80時間超に引き下げた。

 4月の厚労省の発表によると、2015年4月から12月の間に調査した8580の事業所のうち、4790の事業所で違法な残業が確認された。大企業ではABCマートやドンキホーテが摘発された。