「パナマ文書」が暴く名前、米国の著名人なぜ少ない?

「パナマ文書」について一面で報じる南ドイツ新聞の紙面。ドイツ人風刺画家のピーター・M・ホフマン氏が描いた各国首脳の似顔絵が掲載されている(2016年4月7日撮影)〔AFPBB News

 「パナマ文書」の一部が報道され、内外で大きな話題となっている。アイスランドでは資産隠しに関与していたとして現役首相の辞任に進展したほか、米国をはじめ多くの国で捜査当局による本件に関わる調査が着手された。

 一方、習近平氏の肉親が関わったとの指摘があった中国では本件に関する報道は厳しく規制され、またウラジーミル・プーチン大統領の親友がリスト上にあがったロシアでは大統領報道官が、これは西側によるプーチン大統領失墜のための攻撃の一環であるとして、報道内容をあからさまに否定した。

 事実がどうかを調査することもなく報道を規制したり、報道内容を否定したりする中国やロシアのやり方は、国際世論に対する彼らの姿勢の一端を示しており、大変興味深いところだ。

 各種報道によれば、「パナマ文書」とはパナマの法律コンサルティング会社モサック・フォンセカから内部告発者によって漏洩した過去40年にわたる膨大なデータであり、これを南ドイツ新聞が入手し、国際報道調査ジャーナリスト連合(ICIJ)に参加する多くのジャーナリストらが分析した。

西側が仕かけた情報戦争

 4月初旬に公表された報道によれば、プーチン氏の古くからの友人であるチェリストのセルゲイ・ロルドゥギン氏が、西側の制裁対象となっているロシア銀行からの融資を得てオフショア市場で20億ドルに上る取引を行ったという。

 それらの取引はプーチン大統領個人の資産秘匿を巧妙に隠蔽した工作の一環であったのではないかとの指摘がなされている。

 現時点では、大量に漏洩した「パナマ文書」のほんの一部が公開されただけであり、今後全容の解明とさらなる調査結果の公表が待たれるが、本稿ではロシア側が主張する西側の「情報戦争」による攻撃だとの指摘の是非について考察したい。

 我々はICIJと聞くと、一般に世界的に著名な報道機関の有志連合であり、真実を追い求めるジャーナリストたちの公平無私な組織ように思われるかもしれないが(我が国からは朝日新聞社が参加)、そこにはある種のバイアスがないわけではない。

 ICIJはもともと米国のNPOである公共倫理センター(Center for Public Integrity)のプロジェクトで設立されたが、このNPOは米国CBSの著名な報道番組「60 minutes」の元プロデューサー、チャールズ・ルイス氏が1989年に創設した。調査報道の充実を図るのが目的だったと言われている。

 その後同センターにより設立されたICIJは「越境犯罪、汚職や権力の説明責任」などの問題に焦点を当てて調査を行っている。このICIJに資金を提供している機関(財団)はHP上で公表されており、それらは以下の通りである。