朴大統領、北朝鮮への強硬姿勢を強調 米F22戦闘機、韓国飛来へ

韓国・ソウルの国会で演説する朴槿恵大統領(2016年2月16日撮影)〔AFPBB News

 「君はクビだ」-米大統領選挙の共和党指名争いで旋風を巻き起こしているドナルド・トランプ候補はかつて人気テレビ番組でこう叫んで人気者になった。だが、現実の政治ではもっとすごいことが起きている。

 4月13日投開票の韓国の総選挙を前に、与野党が、有権者の気を引くために前代未聞の「現職議員交代」競争を演じているのだ。

 「国民との約束を守ろうとした過去の私の選択のせいで、このような報復を受けることになった」

有力3選与党議員が「公認漏れ」で党替え

 2016年3月20日、ソウル選出の3選議員である陳永(チン・ヨン=1950年生)氏は、与党を脱党して野党の「ともに民主党」(以下、民主党)から出馬することを発表した。

 投票まで1か月を切った時点で突然、所属する政党を与党から野党に替えることになったのだ。当選が有力視されていた陳永議員が苦難の選択をした理由は、15日に与党セヌリ党が公認しないことを決めたためだ。

 「報復」――こんな物騒な言葉まで使ったのは、陳永議員が「公認漏れ」に強く反発しているからだ。

 陳永議員は、判事出身で政界に転じた。

大統領の側近だったが

 朴槿恵(パク・クネ=1952年生)大統領が、与党の代表時代は「秘書室長」を務め、2012年の大統領選挙では政策を取りまとめた。大統領当選後は、「政権引き継ぎ委員会」の副委員長も歴任した。まさに側近中の側近だった。

 政権発足後にはすぐに、保健福祉部長官になった。今の政権の目玉政策の1つである年金など社会保障問題の責任者だった。

 ところが、年金制度改革を巡って、大統領府(青瓦台)と対立し、就任直後に辞任した。これ以降、朴槿恵大統領と疎遠になっていた。

 「重要政策である年金改革に反対して、閣僚まで辞任して大統領に反旗を翻した」。辞任以降、政権内部からこうした批判を浴びてきた。陳永議員は、今回の「公認外し」は、こういう経緯が働いたとみて、党換えを決断した。

  「時代錯誤的な政治報復だ」

 3月23日、今度は、セヌリ党の院内代表を務めた現職の柳承珉(ユ・スンミン=1958年生)議員が無職族での出馬を発表した。

 柳承珉議員も朴槿恵大統領が党代表時代に秘書室長を務めた側近だった。ところが、2015年に党院内代表として大統領の福祉政策を批判して『増税なき福祉は虚構だ』と発言した。これが大統領の怒りを買った。結局、これらの発言で院内代表を辞任し、その後も大統領に近い政治家などから「背信者」などと批判を浴びてきた。

 今回の国会議員選挙にも与党から出馬する意向で、当選濃厚だったが、ついに党が「公認」を出さなかった。