「中国沿岸警備隊が武装強奪」、フィリピン当局が非難

南シナ海で接近する中国の沿岸警備隊の船舶(上)とフィリピンの補給船(2014年3月29日撮影、資料写真)〔AFPBB News

 2015年9月、可決成立した安全保障関連法案が3月に施行される。政府・与党は昨年、この法案を第189回通常国会の最重要法案と位置づけ、95日間という戦後最長の会期延長をしてこれに臨んだ。だが、大山鳴動のわりに本質的議論は最後まで盛り上がらなかった。

 特に奇異に感じられたのは、我が国の取り巻く安全保障情勢の議論なく、憲法論議に終始したことだ。国際情勢の議論なく、安全保障を論議する国は、世界広しといえど、日本だけだろう。また憲法論議から安全保障法制に入るのも順序が間違っている。

 最近の南シナ海における岩礁埋め立て、軍事基地化などでも明らかなように、「力による現状変更」を企てる中国に対し、我が国がどのように認識し、どう対応すればいいのか。北朝鮮の独裁政権と核、ミサイル開発に対し、いかにすれば東アジアの平和と安定は保たれるのか。このような根本的な議論はほとんど行われなかった。

 安全保障の前提となる国際情勢の議論を欠いたまま、法案が提出されても、国会の論議は深まらないし、国民の理解は得られない。まるで空腹を覚えていない人に、フランス料理のフルコースを勧めるようなもので、満腹感(拒否感)だけが先に立つ。

野党法案の大きな勘違い

 その結果が「戦争法案」「徴兵制」といった「レッテル張り」と「揚げ足取り」低劣な議論だった。

 2月19日、民主党や共産党など野党5党は、来月施行される安全保障関連法について、憲法違反であり認められないとして、法律廃止の法案を衆議院に共同で提出した。これも「国際情勢の議論なき安保法制」の後遺症に違いない。

 今回の安全保障法案を廃案にし、代替法案を提示しないということは、理屈的には、現下の国際情勢にあって、現行法制が最善と云うことになる。だが、本当にそうか。

 中国の台頭と傍若無人化、そして北朝鮮の核武装と朝鮮半島の不安定化への対応は、まさに21世紀の国際社会の課題とも言われる。最も影響を受けるのは日本である。こういう現実を直視せず、現行法制が最善とはブラックジョークとしか思えない。

 今からでも遅くはない。「廃止法案」提出を好機として、是非、国際情勢の議論を国会で一から始めてもらいたい。

 2月18日、民主党と維新の党は、領域警備法案、そして周辺事態法改正案、国連平和維持活動(PKO)協力法改正案の三法を共同提出した。メディアは「昨年9月に成立した安全保障関連法の対案と位置付ける三法案」と報じている。だが、中身を一瞥する限り、断片的であり包括的な安保関連法案の「対案」とはなり得ない。