清王朝の王宮だった紫禁城(資料写真、出所:Wikipedia

 中国で何が起きているのか、誰にも分からない。中国がどうなるかは、おそらく中国の指導者も分からないはずである。だからこそ「新常態」という意味不明の言葉が発明されたのだ。

 今、中国社会を覆っているのは「不安」の空気である。たとえてみれば、濃霧で前が見えない高速道路を時速100キロ以上で走っているようなものである。衝突したりひっく返たりするかもしれないリスクを孕みながら、スピードを落とさないのはなぜなのだろうか。

 最大の理由は、早いスピードで走れることが「いい車」の証明だと考えているからである。スピードが落ちて「やはりダメな車だ」と批判されてはならないのだ。

 共産党幹部は経済政策や経済成長のスピードの速さこそが自分の業績として評価されると考えている。確かにスピードが速ければ、大きな利益を享受することもできる。

 経済成長の理想的なスピードは巡航速度で安定して走ることだろう。無理にアクセルを踏まずに本来の実力で、安全に、安定的に走ることである。しかし今までの35年を振り返れば、中国経済はおそらく一度も安定した巡航速度で走ったことはなかった。常に無理して高成長を実現しようとしてきたのである。