米NY、最貧地区とウォール街周辺の平均寿命の差は11年

貧富の差は寿命の差に直結――。ニューヨークのウォールストリート(写真)で働く人の寿命はブルックリンの最貧地区に比べ寿命が11年も長いという調査が発表された〔AFPBB News

 世界で最初に中流層が消えていくのは米国――。

 これまで中流層は国民の中核を成す階層と思われてきた。特に米国や日本などでは大多数の国民が中流に属すとの意識さえあった。

 日本では1970年代、「1億総中流」という言葉が流行りもした。しかし今、米国では中流層が過半数でなくなってきた。

 しかも「中流層が消えつつある」と言っているのは、ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ氏である。先週、同氏が書いたコラムが話題になっている。抜粋して要点を記したい。

医療費は先進国一だが・・・

 「国の繁栄を計る指標の1つが寿命です。政府が医療や社会保障に予算をかければ、多くの人が恩恵を受けて寿命は伸びました。しかし今、米国は先進国で1人当たりの医療費が最も高額にもかかわらず、寿命は世界一ではありません」

 「GDP(国内総生産)の医療費比率は17%。フランスは14%です。ところが米国の平均寿命はフランスよりも3年も低いのです。GDPはもはや社会の幸福度を表す指標になりません。米市民の健康状態はむしろ下がっているのが現実です。この背景には分断社会があります」

 これまで社会格差という言葉はよく耳にしたが、「分断社会」という発言は新しい。それは中流層が減り続け、富裕層と低所得者層の2極化になりつつあるという意味でもある。

 スティグリッツ氏は正規雇用されている米男性の年収の中央値(平均値ではない)は、40年前よりも下がっていると指摘する。高卒者の賃金は実に19%も下降し、大卒の勤労者の所得も頭打ちである。

 実際の生活において、一般勤労者は住宅ローンや自動車ローンだけでなく、日々の生活費もクレジットカードを多用して借金をするのが常になって久しい。大学の授業料もローンで支払い、経済的なストレスは大きい。