福島原発事故、避難解除で選択迫られる住民の苦悩

福島県飯舘村で放射線調査を行う国際環境保護団体グリーンピースのメンバー(2015年7月17日撮影)〔AFPBB News

 「私たちは避難という経験を通じて、一度自然から離れなくてはいけませんでした。そのうえで、やはりここで暮らすしかない、と戻ってきたんです。だからこそ、自然の価値をより深く理解して、ほかとは違うツアーが作れると思います」

 先日、福島県浜通りで活動する団体による情報交換会、「ポジティブカフェ」が開かれました。20代の女性から70代の男性まで、様々な立場の方の集まる会で、「田村復興応援隊」の代表の姿は印象的でした。

 原発事故が風化していくなか、除染や放射線測定という活動から、どのようにして地域再生・地域創生へと移行していけるのか。今、福島ではその大きな転換期に向けて、様々な知恵が生まれています。

自然を学ぶ都会、観光を学ぶ福島

 前述の田村市では、観光資源の手がかりを掴むため、神奈川県藤沢市の自然保護団体、「川名里山レンジャー隊」をグリーンツーリズムのモニターとして招待しました。

 10年前にレンジャー隊が活動に使う農機具を必要としていた時、余っていた機具を寄付してくださったご夫妻が田村市にお住まいである、ということがご縁のようです。ツアーをすることがボランティア、というユニークな活動ですが、田村市にとっても大きな学びになったようです。

 実は相馬市でもそうなのですが、無造作に自然の転がる中で暮らす人たちは、都会人の喜ぶ生き物や風景に無頓着です。私自身、都会から来た同僚たちと「病院の裏にシャケが遡上している!」とはしゃいでいたところ、病院事務の方々に怪訝そうな目で見られた、という経験があります。

 モリアオガエルの繁殖地があるほどの自然の豊かな田村市は、神奈川から来られた「レンジャー隊」にとっては、宝の山だったようです。

 「とにかくあらゆるものが目にとまり、ちっとも前に進んでくれない」状態で、自分たちでナイトツアーまで企画してしまった、と言います。

 「こんな素敵な蔵があるなら、蔵カフェなんかをやってはどうか」「珍しい野鳥がたくさんいるので、野鳥好きを呼べば絶対ウケる」

 里の人々にとって日常になりすぎた風景の中に、貴重な観光資源を再発見してもらったようです。