ドミトリー・メドベージェフ首相とのビデオ会議の模様。右下の画面が筆者

 9月28日、筆者はドミトリー・メドベージェフ首相とのビデオ会議に参加した。

 これは、これまで何度かこのコーナーでも取り上げたロシア版シリコンバレー「スコルコヴォ(Skolkovo)」の設立5周年記念イベントであり、スコルコヴォの発案者であるメドベージェフ首相(当時は大統領)と海外の関係者がオープンイノベーションについて議論するという企画である。

 全体で1時間20分程度の討論会はグーグルが無料で提供するビデオ会議プラットフォーム(Hangout)を利用してモスクワ郊外のスコルヴォと世界7か所の参加者を同時に結んで行われた。今さらながらインターネットの便利さには感心させられる。

 筆者は会社の会議室から参加、日常使用しているノートパソコンに社内のLANケーブルつなげるだけで映像も音声もクリアそのもの、しかもこの討論会の様子はユーチューブで同時中継までされていたのである。

アジアから唯一の出席者

 今回のビデオ会議では筆者はアジアから唯一の出席者ということもあり、ロシア極東地域におけるロシアのイノベーション政策、アジア諸国とのオープンイノベーションの可能性などについて質問した。

 これに対しメドベージェフ首相はロシアは日本はもちろん中国、韓国、ベトナムあらゆるアジア諸国との経済、技術協力に前向きに応じること、またロシア政府は極東地域においては極東連邦大学をテクノロジーハブとする発展計画を推進していることを簡潔明瞭に説明した。

 それは他の参加者からの質問に関しても同様で、多岐にわたる質問内容を如才なく捌いていく様子を見て、筆者はなぜウラジーミル・プーチン大統領が彼を大統領に指名し(一時的ではあったが)、自身が大統領に返り咲いた後も、彼を首相として手許に置いておくのか、その理由の一端を垣間見たような気がした。

 ところでビデオ会議に先立つ9月23日、メドベージェフ首相はロシアの経済誌「経済の諸問題」に「The new reality: Russia and global challenge」 という論文を発表している。

 現在のロシアを取り巻く世界経済の状況を前提に、今後ロシア経済はどのような道を進むべきか彼の考えを述べた、どちらかと言えば国内向けの論文である。 筆者は首相府が公表した英文テキストに目を通したが、一読し「リベラル派の論文」との印象を受けた。