今の中国は日本の1980年代ではなく60年代だという見方もある。青島郊外の風景(資料写真)

 人民元の切り下げショックに端を発した中国経済に対する懸念は株式市場を直撃し、パニック的な世界同時株安を引き起こした。中国経済が今後、どのように推移するのかはまだ何とも言えないが、少なくとも短期間でV字回復するというシナリオは描きにくくなっている。それは、中国が日本のバブル崩壊後と同じように、深刻なバランスシート不況に突入した可能性が高いからである。

 もっとも中国経済はまだ発展途上であり、日本のバブル期ほどの成熟度には達していないとの見方もある。日本の歴史に当てはめれば、旧山一証券が破たんの瀬戸際まで追い込まれた1965年のいわゆる「(昭和)40年不況」に近い状況かもしれない。もしそうだとするならば、思いのほか早いタイミングで成長軌道に復帰させることも可能となるわけだが、果たしてどちらだろうか。

中国経済は非常にちぐはぐな状況

 2000年代における中国の実質GDP成長率は10%を超えていたが、2010年以降はそのスピードが目立って低下している。中国政府は経済成長率の目標を10%台から7%前後に引き下げており、これを新常態(ニューノーマル)と位置付けた。今後は7%程度の安定した成長を維持するという意味である。

 10%から7%に成長が鈍化しただけなので、影響は限定的と思われがちだが、決してそうではない。この数字は物価の影響を考慮した実質値であり、名目値では15%だった成長率が12%に低下している。

 中国の名目GDPはすでに1300兆円に達しており日本の2倍以上の規模がある。1300兆円の規模を持つ経済が15%成長すると毎年200兆円近くの富が生まれるが、これが12%に低下すると毎年の増加分は160兆円程度に減少してしまう。つまり実質の成長スピードが10%から7%に落ちただけで、毎年、40兆円以上の機会損失が発生する計算となる。中国の成長鈍化が及ぼす影響の大きさが想像できるだろう。