中国が南シナ海の人工島に兵器、米国が確認

米軍の偵察機が捉えた、中国が南シナ海で建設を進めている人工島の空撮映像〔AFPBB News

 中国がフィリピンなどと領有権を争っている南シナ海で大規模かつ急速な埋め立て(人工島の建設)を行っている。

 米国は、この件に関しジョー・バイデン副大統領、アシュトン・カーター国防長官などの高官が懸念を示すとともに、米軍は艦船や哨戒機による人工島建設現場周辺のISR(情報・監視・偵察)を行っている。

 中国によるスプラトリー(南沙)諸島における人工島の建設は、中国が多用するサラミ・スライス戦術(salami- slicing tactics) *1の一環である。中国は領土問題において、非軍事的な手段を使い権益を徐々に拡大し、最終的な目的を達成する戦術を採用している。

 日本、米国などの諸国は、中国のサラミ・スライス戦術に対して絶対に守るべき一線つまりレッドラインを決めていないので、中国の巧妙な戦術に適切に対抗することが難しいのである。

 今回の中国の実力行使に対し何の対抗処置を講じないならば、中国の無法な行動を黙認してしまうことになる。覇権主義的な傾向を強める中国にいかに対処するかが今こそ問われている。

 南シナ海における人工島建設の背景には中国の戦略が存在する。中国は、5月26日、「中国の軍事戦略(China’s Military Strategy)」を絶妙なタイミングで発表した。

 従来は2年ごとに国防白書が発表されてきたが、今回は軍事戦略のみに焦点を当てた新たな形で発表された。結論的に言うと、「中国の軍事戦略」は矛盾に満ち、プロパガンダ色の強い文書であるが、中国の公式な軍事戦略は何であるかを分析する資料として価値はあるし、局地戦争の勝利を追求する戦略は侮れない。

 「中国の軍事戦略」における矛盾の多くは、中国共産党のイデオロギーへの執着と共産党の軍隊としての人民解放軍の宿命に起因している。

 純軍事的に軍事戦略を描けばもっと洗練された軍事戦略になるであろうが、イデオロギーの影響を強く受け、本音と建て前の混在、はったりと一部の真実の混在した軍事戦略となっている。

 一方で、米国防省が議会への年次報告書“ Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2015”(以下、「2015米国防省の年次報告書」と記述する)を5月8日に公表したが、中国の安全保障・軍事を語る際には不可欠な文書である。

*1=本のサラミを丸ごと盗めばすぐにばれるが、薄くスライスして盗んでいけばなかなかばれない。この様に、小さな行動を積み重ねることにより、最終的には最終目標を達成しようとする戦術をサラミ・スライス戦術と呼ぶ。