露訪問の米国務長官、ウクライナ停戦履行なら「制裁解除あり得る」

ロシア・ソチにある大統領公邸で米国のジョン・ケリー国務長官(左)を迎えるプーチン大統領(右、2015年5月12日撮影)。(c)AFP/JOSHUA ROBERTS〔AFPBB News

 「ウクライナの不安定な停戦合意が完全に履行されるならば、その時点で欧米がロシアに課している制裁を解除することもありうる」

 こう述べたのはケリー米国務長官である。5月12日にウクライナ危機以降初めてロシアを訪問し、プーチン大統領・ラブロフ外相と8時間にわたり会談を行った。

 会談後ケリー長官は、「特に今日のように複雑で流動的な時期には、主要な政策決定者と直接対話する以外の良策はない」と語った。「フィナンシャル・タイムズ」(5月12日付)が「ケリー米国務長官の訪露はロシアの外交的勝利」と報じているとおり、冷戦後最悪と言われていたロシアとの関係から脱するために、「ロシアとの話し合いのパイプを閉ざさない必要がある」と判断した米国側の譲歩であることは間違いない。

 ケリー長官は「ISILなどの暴力的な過激主義に対処する上でロシアは極めて重要なパートナーだ」と強調した。CNNが4月23日に発表した世論調査によれば、米国民の68%がISIL(いわゆるイスラム国)を非常に深刻な脅威と受け止め、ロシアに対する懸念(25%)を大きく上回っている。米国は現在、イラクやシリアでISIL拠点に空爆作戦を進めている一方、国内ではISILの「浸透」を防ぐべく対応を迫られており、ロシアとの協力が不可欠になっているのだ。