盤石の体制を築きつつある習近平政権の死角とは?北京の天安門広場(資料写真)

 最近、朝日新聞記者・峯村健司氏の著書『十三億分の一の男 中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争』(小学館)を読む機会があった。筆者はまだ峯村氏と面識はないが、北京特派員として数多くのスクープをものにしてきた敏腕記者だという評判は聞いていたから、興味深くページを繰った。

 執念深い取材ぶりに感心するとともに、あくまで自分自身による取材によって裏付けられた事実へのこだわりが随所に見られ、筆者も知らなかった様々な事実が数多く出てきたが、もちろん一般読者向けの「読み物」であり情報源は明示されていない。だから、記述されている事柄の真偽については、著者本人に「問い詰める」しかないが、新聞記者は情報源を明かさないのが本分だから、聞いてもまともには答えてくれないだろう。

 とはいえ、峯村記者と筆者の問題意識は同書の結論部分で同調していた。

 「(習近平という)この異形の指導者は、腐敗し切った党の病理を取り除くことに歴史的使命を得るだろう。ただし、その先に待ち受けているのは何か─」(括弧内は筆者の補足)。そして、「私が想定する最大のリスクは『強大になりすぎる習近平』だ」という言い方で、習近平主席への権力の集中がもたらす危険性を指摘している。

 要するに、腐敗し切った党を何とかしなければ、中国革命の成果としての中国共産党の統治が維持できない、という危機感が、習近平をして「反腐敗キャンペーン」に駆り立て、自らに権力を集中させることで政権の安定を目指そうとしている。ただし、それがどのような結果をもたらすのかはまだ分からない、ということだ。

 峯村記者も筆者も、権力集中を強引に進める習近平主席の政治手法に「危うさ」を感じている。