前回のコラム(『人を感動させ動かすとっておきの一言』)で、「誰かのために」という意識がモチベーションを大きく上げることを紹介した。今回は「自分のために」という観点からモチベーションについて書いてみたい。

 「自分」という存在をどのように捉えているだろうか。「自分」はその瞬間瞬間に存在している。この文章を読んでいる瞬間に存在する自分も「自分」の1つである。

 1秒前の自分、1時間前の自分、1日前の自分、1年前の自分、10年前の自分。どれもすべて「自分」である。過去の自分は将来の自分を想い、その時その時の環境の中で、将来に夢を描き、努力をし、そして生きている。

自分に対して投げやりになっていた旧友の涙

現在の自分は、子供の頃からの数えきれない「過去の自分」によって存在する ©AFP/Kazuhiro NOGI [AFPBB News]

 物心ついた幼い頃の純粋無垢な自分は、無限の可能性を感じ、きらきらとした眼差しの中で将来を思い描いていた。そして、幼いながらに考え、悩み、努力をし、将来の自分へと「自分」のバトンを渡していく。

 今の自分が存在するのは数えきれないほどの過去の自分の存在によるものである。それゆえに、将来の自分は過去の自分に対して感謝し、そして責任を持たなければならない。

 責任を持つとは、将来の自分を信じバトンを引き継いできてくれた過去の自分に恥じない生き方をするということである。

 数年前、私は小学校時代のある同級生と数十年ぶりに会った。野球部のチームメイトで、小学校時代から一目置く存在だった。リーダーシップを発揮し、ムードメーカーで皆から慕われる人気者だった。私も彼を慕う1人だった。

 野球の練習がない日は「自主トレ」と称して河川敷のグランドまで一緒にランニングした。その帰り道、小学生ながらに彼と将来について話した。彼の将来の話を聞くくのが私はとても好きだった。そんな友人と数十年ぶりの再会である。

 どんな社会人になっているのだろうと自ずと胸は高鳴った。居酒屋で待ち合わせし、お互いを確認すると「おー、久しぶり!」と言葉を交わす。数十年前の面影はどことなく感じながらも、しかし彼の人相は変わっていた。