先日、原子力関係のシンポジウムで発表をさせていただきました*。原子力に関わっている方々に、原発事故後の健康問題について少しでもご理解いただきたかったためです。

●屋内退避指示が出された結果、その地域の物流が途絶え、人々が飢えに苦しんだこと
●仮設住宅の生活により成人病や廃用症候群など様々な健康被害が出ていること(詳細は*2に書かせていただいています)

避難指示を解除へ、旧警戒区域で初 福島・田村市

事故を起こした福島第一原子力発電所〔AFPBB News

 などを実際のデータに基づいて説明し、「原発を継続するのであれば、最低限このような被害を出さない避難計画を立てていただきたい」と提言しました。

 この発表の後、参加者のお1人が即座に言われました。

 「30キロ圏内の人々の食料や燃料は東京にいた東京電力の職員が届けるべきだった・・・」

 それ以外にも「どうすればこのような健康被害が起きずに済むか」という観点で、侃々諤々の議論がなされました。技術者の方が多いためでしょうか、今回の失敗を反省し、学んで、改善したい、という熱意あふれる方々の多さに驚きました。

 もちろん、中には全く異なった反応をされる方もいらっしゃいます。時折聞くのが、「『常識的に』原子力は止められるわけがないじゃないか、だから反原発など非論理的だ」と言われる方です。

 論理的に考えればそんなことしたら日本が存続できなくなってしまうのに、どうして世間はそんなことが分からないのだ、民度が低い、と、コミュニケーションを拒否してしまうのです。

方向性とプロセス

 このような議論は、同じように反原発の方に対しても言えます。

 原発再稼働に反対される方々の中にも、一方には原発廃止の結果生じてくる経済問題、そこから派生する健康被害と貧困について深く考えられた末に反対される方がいらっしゃいます。

 あるいは万一反原発が聞き遂げられず再稼働してしまった時には、上記のような健康被害を食い止めるために何をすればよいのだろう、という次善の策を考えられている方もいます。