エコノミスト・カンファレンス「ジャパン・サミット2014:2020年に向けた日本の転換」からお届けするリポート第3回は、『世界の中の日本』。政治学者でコロンビア大学のジェラルド・カーティス教授が安倍政権への評価を述べた(4月17日開催)。

今後半年の間に「3本目の矢」を放たなければならない

コロンビア大学教授のジェラルド・カーティス氏(写真提供:エコノミスト・カンファレンス)

カーティス 今、安倍(晋三)首相が問われているのは、「3本目の矢」はどうなったのか、いつ実行されるのかということです。

 今後3カ月から6カ月は、安倍政権にとって極めて重要な時期だと思います。曖昧な期待感だけで人を長期間導くことはできません。今こそ具体的な成果を示す必要があります。

 数カ月のうちにそれができれば、多くの人が抱いている不信感、3本目の矢には具体性がないのではないかという懸念が解消されるはずです。

 例えば、法人税の引き下げです。私の理解するところでは、安倍首相は今後3年間に段階的に29%まで引き下げたいと望んでいるようです。しかしこれには財務省だけでなく、自民党内部にも強い抵抗があります。

 外国人労働者の問題も重要です。安倍首相は、歴代のどの首相よりもこの問題に前向きな姿勢を示しています。

 ちょっと脱線しますが、この問題をうまく利用すれば、彼は一面的な国家主義者であるとの批判をかわすことができると思います。社会の保守層を代表するメディアであり、安倍首相を最も強く支持している産経新聞が、この問題では彼と対立していますから。

 混合診療の問題もあるでしょう。これを認めるには新たな設備や診断機器、その他の医療機器への巨額の投資が必要になるため、厚生労働省は強く反対しています。日本の医学界も同様です。安倍首相は彼らのような既得権を持つ勢力を抑えることができるのでしょうか。

 今後これらを実行に移すのであれば、すぐにも決断を下さないといけません。決断したなら6月には重大な発表があるはずです。

 そこで具体的な中身が明らかになれば、3本目の矢は俄然現実的なものとなります。安倍首相は一般論を語るだけではなくなり、それらの諸課題に大量の政治資本を投入することになるでしょう。

 しかし首相がそれを行わず、9月、10月になっても何の発表もなければ、3本目の矢は実現しないでしょう。そうなれば、市場や世論は極めて厳しい反応を示すことになります。