経営力がまぶしい日本の市町村50選(23)

 福井県大野市は人口約3万6000人の町で、県の東部に位置し、霊峰白山の支脈や九頭竜川など、水と緑が豊かな地域である。

星空も水も美しい、自然豊かな「北陸の小京都」

 織田信長に仕えた武将、金森長近が越前大野城を築き、山頂にそびえる天守閣と碁盤目状の街並み、中世から近世にかけて築かれた寺院が連なる寺町通りなどから「北陸の小京都」と呼ばれている。

1968年に復興された越前大野城の天守(ウィキペディアより)

 大野市には城下町誕生のころから続くとされる七間朝市など、400年を超える歴史そのものに触れることができる景観や文化が色濃く残り、近年はまちなか散策を目的とした観光客が増加している。

 また、市域面積の8割を占める広大な森林は、星空が日本一美しいまち(平成16年度全国星空継続観察)に選ばれるほどの澄んだ空気と豊かな湧水を育み、水の郷百選、森の巨人百選、名水百選、水源の森百選などまさに自然の宝庫である。

 恵まれた湧水のおかげで酒や醤油、味噌などの水を生かした食文化が豊かで、現在でも多くの家庭では、飲料水に地下水を利用する等の独特な湧水文化が受け継がれている。

 そんな自然に恵まれた大野市には多くの見どころがあるが、例えば、四季を通じてアウトドアライフを満喫できる六呂師高原や、近年登山客が増加している日本百名山のひとつである荒島岳をはじめ、能郷白山、経ヶ岳、三ノ峰、銀杏峰などの四季折々の表情を見せる山々。

 さらには十和田湖に匹敵する規模を誇る人造湖の九頭竜湖の周辺には豊かな自然環境を活用したスポーツ、レクリエーション基地を核に、温泉を利用した九頭竜保養の里などが整備されている。

 これらは冬場はスキー場と化し、ウインタースポーツ客の受け入れ場にもなっている。そして、世界最古級のティラノサウルス科の恐竜の歯や、日本最古の鳥の足跡化石などが展示される郷土資料館も観光名所となっている。

 また、大野市には生涯学習や環境教育の施設も充実しているが、過去に相当教育に力を入れた時代がその背景にあるのかもしれない。1856年に大野藩主土井利忠に招かれた伊藤慎蔵が洋学館長として蘭学教育などに励むと、新しい時代の学問を求めて全国から生徒が集まるほどだったようである。

 利忠は出自にかかわらず優秀な人材を次々と登用し洋書の購入や西洋医学の採用などを推進する一方で、藩の将来を見据えて、誰もが教育を受けられるようにと藩校「明倫館」を開設するなど44年間の在位中に教育政策を一気に推し進めた。