12月6日──この日、上海市は史上最悪の大気汚染を経験した。

 AQI(空気質指数、Air Quality Indexの略)は484を観測し、6段階のうち最も危険だとされるゾーンに突入した。また、PM2.5(微小粒子状物質)は602.25マイクログラム/立法メートルを記録。WHOの大気質指針(24時間平均25マイクログラム/立法メートル)と比較しても、24倍の汚染度である。

 「自分が伸ばした手の指先が見えない」とまで形容された北京のスモッグだが、上海でもそれに近いことが起こっていた。虹橋空港に近い滬青平公路では、滑走路に近い場所であるにもかかわらず、轟音だけが耳をつんざき、飛行機の姿は見えない。

 市の中心部を走る虹橋路の片側6車線道路では、道路の向こう側がぼんやりかすんで何も見えない。交通標識もバスの行き先も視界から消えた。朝だというのに夜のような暗さの中を、車はヘッドライトをつけて走行していた。

同じ場所で左は12月5日、右は12月6日に撮影。右の写真ではスモッグで高層ビルが消えている

 上海市民は大気汚染の深刻さと気味の悪さを改めて思い知ると同時に、とても容易に解決できる問題ではないということを痛感した。果たして中国に、これを解決する手立てはあるのだろうか。

装置を自力開発できる技術はない

 今年、相次いで報道された中国の大気汚染問題だが、さすがに中国政府も国家の一大事としてこれを認識し、対策に本腰を入れ始めている。環境基準値が見直され、事業者に厳しい数字を要求するようになった。また、罰則の強化や対策のための予算を増やすなど、様々な取り組みが行われている。