3月16日のギリシャ財政緊縮追加策発表期限、4~5月のギリシャ国債約200億ユーロ満期到来を前に、ギリシャ問題を巡る各国の動きがあわただしくなっており、救済策の内容について、様々な要人発言や観測報道が出てきている。

 メルケル独首相は2月28日、「ユーロが導入後もっとも困難な状況にあるのは明らかだ」と述べた。実際、米商品先物取引委員会(CFTC)が2月26日に発表した先物取引建玉状況(2月23日時点)によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)に上場されているユーロ通貨先物(対ドル)の非商業取引(投機筋の売買動向を示すとされる)の建玉バランスは、7万1623枚の売り越しで、4週連続で過去最大のユーロ売り越し幅になった。また、信用度および流動性の高さからユーロ圏内で「質への逃避」の対象になっている2年物のドイツ国債利回りは過去最低水準を断続的に更新しており、2月26日には0.825%まで低下する場面があった。

 ギリシャの自助努力にのみ事態の展開を委ねて救済の手を差し伸べないという選択肢は、ポルトガルなどへの危機拡大を結果的に後押ししてしまい、通貨統合の崩壊にさえつながりかねない危険なものであるため、2月に開催された欧州連合(EU)首脳会議で、必要に応じて支援策を講じるという原則論が固まった。そして、3月半ばにかけて、ギリシャ内外の情勢を見極めつつ具体的な支援手法を固める時間帯に入っているものと受け止められる。

 市場に十分な安心感を与えるためには、ギリシャ救済スキームの規模は、4~5月のギリシャ国債満期到来額である200億ユーロを上回るものになる必要がある。ブルームバーグが2月26日にドイツの複数の議員を情報源に報じたところでは、EUによるギリシャ救済計画は最大250億ユーロ。同月28日にウォールストリート・ジャーナルが報じたのは、300億ユーロ規模のギリシャ支援計画の取りまとめ作業が始まったという話である。

 一方で、ギリシャの信用リスクがユーロ圏全体あるいは独仏といった圏内主要国に移転するだけでは、欧州通貨統合の枠組み自体の弱点を突かれる形になった今回の危機の解消にはつながりにくい。また、正面からのギリシャ救済に対してドイツの世論が強く反対していることも、救済スキームの内容に影響を与えてくる重要な要素である(3月1日作成「要人発言から浮き彫りになった『難題』」参照)。数多くの報道が伝えているドイツのギリシャ救済手段は、ドイツ政府によるダイレクトなギリシャへの融資や債務保証ではなく、ドイツ復興金融公庫(KfW)によるギリシャ国債の購入である。フランスについても、同様の機関であるフランス預金供託公庫の名前が挙がっている。ドイツの欧州議会議員の1人は2月27日のギリシャのテレビ出演で、ドイツ、フランスに加えてオランダもギリシャ国債を購入する計画だ、と述べた(2月27日ロイター)。

 ギリシャ国内での2月10日と24日の大規模ストの影響に早くから注目してきた筆者は、最終段階でカギを握っているのはギリシャの国内世論ではないかとみている。大規模ストで経済が一時的に麻痺しても、あるいは財政緊縮策を積み重ねる中でも、パパンドレウ政権に対する国民の支持が基本的に崩れないのであれば、問題はいったん終息に向かいやすいと考えられるからである。すなわち、追加財政緊縮策の表明と着実な実行の確約(およびEUによる定期的な監視)と引き換えに、ギリシャ支援策が発動されて、4~5月に満期が到来するギリシャ国債の借り換えがスムーズに進む見通しが立つというシナリオである。