14~15日にワシントンで開催された金融サミット(Summit on financial market sand theworld economy)は、事前に予想された通り、危機状況に対する即効性や市場へのサプライズに乏しい内容の首脳宣言・行動計画を発表するにとどまった。

金融サミット、声明を採択して閉幕

市場原理主義敗北、もはや消え去るのみ…〔AFPBB News

 金融サミットの首脳宣言は、「今回の危機の根本的な原因」として、「強い世界経済成長、資本フローの伸び、長期安定が続いたこの10年のうちの早い時期に、市場参加者は適切なリスクの評価がないまま高い利回りを求め、適切なデューデリジェンス(資産査定)を実行できなかった。同時に、弱い引き受け基準、不健全なリスク管理慣行、ますます複雑で不透明になった金融商品、その結果としての過剰なレバレッジが、システムに脆弱性をもたらした。

 いくつかの先進国では、政策当局、規制・監督当局は、金融市場で累積したリスクを適切に評価して対応することができず、金融の技術革新についていけず、あるいは国内における規制がシステムに及ぼす影響を考慮することができなかった」とした。

 その上で首脳宣言は、「現在の状況の根底にある主な要因で特筆されるべきは、一貫性がなく協調が不十分なマクロ経済政策と不適切な構造改革で、これらが世界マクロ経済の持続不可能な結果につながった。そうした展開が重なって様々な過剰に、最終的には厳しい市場の混乱という結末につながった」と続けた。

 要は、バブル期に起こる典型的な出来事が、金融の技術革新を背景に今回は地理的な面も含めてより大きな規模になってしまった、ということである。「後悔先に立たず」という諺が頭をよぎる。しかし、市場が人間心理に基づいて上下に振れるものである限り、大きさはともあれ、バブルの生成と崩壊のサイクルは将来も繰り返されるものと、筆者は考えている。

 首脳宣言は次に、「これまでに取られた、あるいは取られるべき措置」を列挙している。金融システム安定化に必要な追加策、国内状況に照らして適切と判断される場合の金融政策による支援に加えて、「財政の持続可能性維持につながる政策の枠組みを確保しつつ、適切な場合、即効性のある内需刺激のための財政措置を用いる」と明記。先進国の利下げ余地が限られてくる中で、財政による景気刺激策の活用を、従来よりも前面に出した。

 すでに景気刺激策を発表している日本やドイツ、中国などに加えて、イタリアが景気刺激策を近く公表する見通しである。カナダのハーパー首相は、「金融政策だけでは世界経済は危機から脱却できないとの見解で一致した。財政政策、追加的な財政措置が必要になるだろう」と述べた。

 首脳宣言はさらに、「金融市場改革のための共通原則」として、「透明性と説明責任の強化」「健全な規制の強化」「金融市場における誠実さの促進」「国際協調の強化」「国際金融機関の改革」の5点を並べた行動計画を提示。G20の財務相に対し、2009年3月末までに追加策をとりまとめるよう要求した。